ケルベロス

ケルベロスは、三つの頭を持つ巨大な犬種の魔法生物である。『ハリー・ポッターと賢者の石』に登場した個体は、ルビウス・ハグリッドによって「毛むくじゃら (Fluffy)」と名付けられ、ペットとして飼育されていた。この生物は、アルバス・ダンブルドアの依頼により、ホグワーツ魔法魔術学校の三階の立ち入り禁止の廊下に置かれ、賢者の石を守るための最初の番人として配置された。

「毛むくじゃら」は、1991年から1992年の学校年度において、賢者の石をヴォルデモート卿から守るための一連の魔法的防衛の第一関門として機能した。

• 配置の経緯: ハグリッドは、『ハリー・ポッターと賢者の石』の出来事より前に、漏れ鍋で出会った「ギリシャ人の知り合い」から毛むくじゃらを購入した。その後、ダンブルドアに貸し出され、ホグワーツ城内の仕掛け扉を守る番犬となった。
• 最初の遭遇: ハリー・ポッター、ロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャーは、夜中に城を徘徊していた際、管理人であるアーガス・フィルチから逃れるために偶然この立ち入り禁止の廊下に駆け込み、毛むくじゃらに初めて遭遇し、その恐ろしい姿に驚愕した。
• 弱点の露見: ハグリッドは意図せずして、毛むくじゃらが音楽を聴くとすぐに眠ってしまうという重大な弱点を三人に漏らしてしまう。この弱点は、当時ヴォルデモート卿に体を乗っ取られていたクィリナス・クィレル教授によって既に発見されており、彼は魔法で自動演奏するハープを用いて毛むくじゃらを眠らせ、仕掛け扉を通過していた。
• 三人による突破: 賢者の石がセブルス・スネイプに狙われていると誤解したハリーたちは、石を守るため毛むくじゃらの元へ向かった。彼らはハグリッドからクリスマスに贈られていた木製の笛を使い、毛むくじゃらを眠らせることに成功し、仕掛け扉の先へと進んだ。
• その後の運命: 賢者の石が破壊され、その防衛任務が終了した後、毛むくじゃらは禁じられた森に放された。しかし、その後ダンブルドアの計らいにより、彼の故郷であるギリシャに送還された。（Pottermore）

• 外貌: 毛むくじゃらは、天井に届くほどの巨体を持つ怪物的な犬である。最も顕著な特徴は三つの頭であり、それぞれが黄色い目を持ち、剥き出しになった恐ろしい牙の列からは、粘着質のよだれが絶えず滴り落ちている。
• 性格: 番犬としては極めて獰猛で攻撃的であり、その唸り声と威圧的な姿はほとんどの侵入者を退ける。しかし、その一方で音楽には全く抵抗できず、聴くとすぐに眠ってしまうという穏やかな一面も持つ。ハグリッドに対しては忠実であり、彼からは愛情を込めて「毛むくじゃら」という、その姿とは裏腹な名前で呼ばれていた。

• 能力:
  • 怪力: 巨体に相応しい圧倒的な物理的強度を持つ。
  • 鋭い感覚: 三つの頭に備わった六つの目、三つの鼻、三対の耳により、侵入者を極めて効果的に探知することができる。
  • 番犬としての威圧感: その存在自体が強力な抑止力となる。
• 弱点:
  • 音楽: 唯一にして最大の弱点。少しでも音楽を聴かせると、深い眠りに落ちてしまう。

• ルビウス・ハグリッド: 飼い主。毛むくじゃらを恐ろしい怪物ではなく、愛すべきペットと見なしており、深い愛情を注いでいた。
• アルバス・ダンブルドア: 毛むくじゃらの能力を評価し、賢者の石を守るという極めて重要な任務を任せた。
• ハリー・ポッター、ロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャー: 当初は恐怖の対象であったが、後にその弱点を利用して目的を達成した。
• クィリナス・クィレル: ヴォルデモート卿のために、ハープを使って毛むくじゃらを眠らせ、賢者の石への道を切り開いた。

• ケルベロス (Cerberus): ギリシャ神話に登場する、冥界の入り口を守る三つ頭の番犬に由来する。神話と同様に、本作でも「重要な何か」を守る番犬としての役割を担っている。
• 毛むくじゃら (Fluffy): ハグリッドが付けた愛称。「ふわふわしたもの」を意味するこの名前は、巨大で恐ろしい生物に意図的に可愛らしい名前を付けるという彼の性格をよく表している（例：ドラゴンのノーバート、アクロマンチュラのアラゴグ）。

• J.K. ローリングは、公式サイト Pottermore を通じて、毛むくじゃらが賢者の石を巡る事件の後にダンブルドアによって故郷のギリシャに返されたことを明かしている。
• 映画版『ハリー・ポッターと賢者の石』では、ケルベロス（毛むくじゃら）はCGIによって生き生きと描かれ、原作の描写に忠実な恐ろしい姿が再現されている。