上級魔薬作成

『上級魔薬作成』は、ホグワーツ魔法魔術学校N.E.W.T.レベルの魔法薬学の授業で採用されている標準的な教科書です。 物語で中心的な役割を果たすのは、ハリー・ポッターが6年生の時にホラス・スラグホーンの教室の棚から借り受けた一冊の古い教科書です。この本は表紙がボロボロで、ページは黄ばんでおり、長年使い込まれた形跡がありました。最大の特徴は、本の余白という余白が、元の所有者による蜘蛛のような細い字の手書きの注釈でびっしりと埋め尽くされていることです。その注釈には、公式の調合手順に対する修正案、より優れた調合方法、そして独自に発明された呪文などが記されていました。 本の裏表紙には、「この本は混血のプリンスの所有物である」という一文が記されていました。

この教科書の主な用途は、上級魔法薬の調合方法を学生に教えることです。本書には生ける屍の水薬福びん薬(フェリックス・フェリシス)といった極めて高度で複雑な魔法薬のレシピが記載されています。 「混血のプリンス」の注釈 ハリー・ポッターが手にした特定の教科書は、元の所有者である「混血のプリンス」(正体はセブルス・スネイプ)による手書きの注釈によって、単なる教科書以上の価値を持っていました。

  • 魔法薬調合の改良案:
    • 生ける屍の水薬: 材料のソフォフォラスの豆は銀のナイフで「切る」のではなく、ナイフの「腹で潰す」ことで、より多くの汁を抽出できる。
    • 多幸薬 (Elixir to Induce Euphoria): めまいや鼻歌といった副作用を消すため、最後にペパーミントの小枝を一本加える。
    • 全般: 逆時計回りに7回かき混ぜた後、時計回りに1回かき混ぜるなど、随所に効率を上げるための修正が加えられていた。
  • プリンスが発明した呪文:
    • セクタムセンプラ (Sectumsempra): 「敵に対して」と記された闇の呪文。対象を切り裂き、深い傷を負わせる。
    • レビコーパス (Levicorpus): (無言呪文)対象の足首をつかんで逆さ吊りにする。
    • マフリアート (Muffliato): 周囲の人々の耳にブンブンという雑音を響かせ、会話を盗み聞きされないようにする。
    • ラングロック (Langlock): 対象の舌を口蓋に貼り付けて喋れなくする呪文。
    • その他、足の爪を異常に伸ばす呪いなど、様々な実用的な呪文や呪いが記されていた。

この教科書は、著名な魔法薬学者リバチウス・ボレージによって執筆されました。 ハリー・ポッターが使用した一冊は、元々セブルス・スネイプが学生時代に使っていたものです。スネイプは、純血の魔女である母アイリーン・プリンスとマグルの父を持つ「半純血(混血)」であったことから、自らを「混血のプリンス」と名乗り、この教科書に自身の発見や発明を記録していきました。 卒業後、この本は魔法薬学の教室の物置に放置されていましたが、数十年後、ホラス・スラグホーンが教職に復帰した際、ハリー・ポッターが偶然手に取ることになります。ハリーはプリンスの指示に従うことで、スラグホーンのお気に入りの生徒となり、褒美として一瓶の福びん薬を獲得しました。 しかし、ドラコ・マルフォイとの決闘でセクタムセンプラを使用してしまい、その呪文の危険性を目の当たりにしたハリーは、ジニー・ウィーズリーの助言を受け、この本を必要の部屋に隠しました。 最終的にこの本は、ビンセント・クラッブ必要の部屋で放った悪霊の火によって、部屋にあった他の全ての物と共に焼失したと推測されます。

『上級魔薬作成』は、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の物語全体を貫く中心的なプロット装置です。

  • 謎の提供: 「混血のプリンス」が何者であるかという謎が、物語の主軸の一つとなります。
  • ハリーの成功の鍵: この本のおかげで、ハリーは魔法薬学でかつてないほどの才能を発揮し、物語の鍵となる福びん薬を手に入れます。
  • キャラクターの対立: 本の指示を「ズル」だと考えるハーマイオニー・グレンジャーと、その実用性を信じるハリーとの間で対立を生み出しました。
  • スネイプの過去の開示: 最終的に、この本はセブルス・スネイプの驚くべき才能、孤独な学生時代、そして若くして闇の魔術に深い知識を持っていたという過去を明らかにする重要な手がかりとなりました。
  • 映画版『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では、教科書に書き込まれた注釈が、より乱雑で芸術的なカリグラフィーで描かれており、プリンスの独創性とやや不安定な内面が視覚的に強調されています。(映画設定)