銀シックル

銀シックル (Silver Sickle) は、英国の魔法ワールドで流通している三種類の硬貨のうち、中間の価値を持つ銀貨です。金貨であるガリオンと、銅貨であるクヌートの間に位置づけられています。 外観は銀製で、ハリー・ポッターが初めて手にした際には、「マグルのお金よりずっと厚くて重い」と感じたと描写されています。硬貨にどのような図案が刻印されているかについての詳細な記述は、原作小説にはありません。

銀シックルの最も主要な用途は、魔法ワールドにおける経済活動の交換媒体です。その価値は厳密に定められており、以下の換算レートが適用されます。

この通貨は、ゴブリンによって鋳造・管理されており、偽造を防ぐための魔法がかけられていると推測されます。日常的な買い物やサービスの支払いに広く使用されます。例えば、夜の騎士バスの基本料金は11シックル、ホッグズ・ヘッドでのバタービール一杯の価格は2シックルでした。

銀シックルを含む魔法通貨の歴史は古く、長年にわたり英国魔法ワールドの経済を支えてきました。通貨の鋳造と供給は、設立以来グリンゴッツ魔法銀行を運営するゴブリンたちが独占的に担っており、その管理は極めて厳格です。この事実は、魔法社会におけるゴブリンの特殊な立場と、彼らの金属加工および金融に関する卓越した能力を象徴しています。

銀シックルは、物語全体を通して魔法ワールドのリアリティと独自の文化を構築するための重要な小道具として機能します。

  • 世界の構築: 非十進法(17と29という素数)の複雑な換算レートは、魔法社会がマグルの世界とは異なる論理と歴史で動いていることを読者に強く印象付けます。
  • 日常の描写: ホグワーツ特急での菓子購入、ダイアゴン横丁での買い物など、キャラクターたちの金銭のやり取りを通じて、彼らの生活感が具体的に描かれます。
  • 社会的格差の表現: 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』でウィーズリー家がグリンゴッツの金庫を開けた際、中には少数のシックルとたった1枚のガリオンしかなく、彼らの経済的な困窮を視覚的に示しました。
  • J.K. ローリングは、魔法通貨の換算レートをわざと不便で複雑なものにしたと語っています。これは、魔法使いがマグルとは違う考え方をする、少し風変わりで非論理的な文化を持つことを表現するためでした。(作者インタビュー)
  • 「シックル (Sickle)」という名称は、三日月の形をした古代の農具「鎌」を意味します。月は古来より銀と関連付けられることが多く、金貨のガリオン(太陽)や銅貨のクヌート(大地)との対比を意識した命名である可能性があります。