レイブンクローの髪飾りは、繊細で古風な銀色のティアラです。レイブンクロー寮の象徴である鷲の形をしており、きらめく青白い石で飾られています。その表面には「計り知れぬ知恵こそ、人にとって最大の宝なり」(Wit beyond measure is man's greatest treasure.) という言葉が刻まれています。灰色の貴婦人の亡霊は、生前この髪飾りを「母の物より美しく見せようと」していたと語っており、その外見は非常に魅力的であったことが示唆されています。 ヴォルデモート卿が魂器として呪いをかけた後は、邪悪な魔力を帯びるようになりましたが、その美しい外観は保たれていました。
この髪飾りは、ホグワーツ魔法魔術学校の創設者の一人、ロウェナ・レイブンクローが所有していた伝説の品でした。しかし、彼女の娘であるヘレナ・レイブンクローは、母の知恵と名声に嫉妬し、母を超える存在になりたいという野心から髪飾りを盗み、アルバニアの森へと逃亡しました。 死の床にあったロウェナは、娘に会いたい一心で、かつてヘレナを愛していた血みどろ男爵に彼女を連れ戻すよう依頼しました。しかし、ヘレナが帰還を拒んだことに逆上した男爵は彼女を殺害し、罪の意識から自らも命を絶ちました。ヘレナはホグワーツのレイブンクロー塔の幽霊「灰色の貴婦人」となり、髪飾りはアルバニアの森の木のうろに隠されたままでした。 数世紀後、ホグワーツを卒業したトム・リドルは、灰色の貴婦人を巧みに言いくるめて髪飾りの隠し場所を聞き出すことに成功します。彼はアルバニアで髪飾りを発見し、それを魂器に変えました。その後、アルバス・ダンブルドアに闇の魔術に対する防衛術の教授職を志願してホグワーツを訪れた際、自分だけが知る秘密の場所だと信じていた必要の部屋に髪飾りを隠しました。
『ハリー・ポッターと死の秘宝』において、この髪飾りはヴォルデモートを倒すための重要な鍵となります。ハリーはヴォルデモートの魂器の一つがレイブンクローゆかりの品であると推測し、ルーナ・ラブグッドから「失われた髪飾り」の伝説を聞きます。 ハリーはレイブンクロー塔の幽霊である灰色の貴婦人から、長い説得の末に髪飾りの悲劇的な歴史とその隠し場所が必要の部屋であることを聞き出します。彼は6年生の時に上級魔法薬の教科書を隠した際、偶然にもこの髪飾りをウィッグを被った胸像の上に乗せていたことを思い出しました。 ホグワーツの戦いの最中、ハリー、ロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャーは髪飾りを破壊するために必要の部屋へ向かいます。そこでドラコ・マルフォイ、ビンセント・クラッブ、グレゴリー・ゴイルに襲撃され、クラッブが放った制御不能の呪い「悪霊の火」によって部屋中が炎に包まれます。この強力な炎が結果的に髪飾りを破壊し、中にあったヴォルデモートの魂の欠片を消滅させました。