杖作り (Wandmaking) は、魔法使いや魔女が魔法を行使するための道具である杖を製造する、古くから伝わる繊細な魔法の技術です。杖は単なる道具ではなく、準知覚的な存在とされ、持ち主となる魔法使いを自ら選ぶという特性を持ちます。優れた杖作り職人は、杖学 (Wandlore) と呼ばれる、杖の複雑な性質に関する知識にも精通している必要があります。
杖は主に、外側の「杖木」と、中心に納められた魔法物質である「杖芯」の二つの要素から構成されます。これらの組み合わせが、杖の個性と能力を決定づけます。
杖作りの最も重要な原則は、杖が魔法使いを選ぶ という思想です。これはオリバンダーが特に重視した哲学であり、魔法使いが杖を手にした際の「相性」が、その後の魔法能力を大きく左右するとされます。 他人の杖を使用することも可能ですが、元の持ち主から正当に「勝ち取らない」限り、杖は最高の性能を発揮しません。杖の忠誠心は、前の所有者を武装解除するか、打ち負かすことで移ることがあります。この原則は、特に死の秘宝の一つであるニワトコの杖の所有権を巡る物語で中心的な役割を果たしました。
『ハリー・ポッターと賢者の石』において、ハリー・ポッターがオリバンダーの店で自身の杖と出会う場面は、彼が魔法界の一員となる上で象徴的な出来事です。 ハリーとヴォルデモートの杖は、フォークスの羽根という同じ杖芯を持つ「兄弟杖」であり、二人が対決した際にプライオア・インカンタート (逆呪文) 現象を引き起こしました。 『ハリー・ポッターと死の秘宝』では、杖の忠誠心という杖学の法則が物語の根幹をなし、ニワトコの杖の真の持ち主が誰であるかという謎が、第二次魔法戦争の帰趨を決める重要な鍵となりました。