イゾルト・セイア

イゾルト・セイア

イゾルト・セイア (Isolt Sayre) は、北アメリカの魔法界における重要人物であり、イルヴァーモーニー魔法魔術学校の創設者の一人です。彼女は高名なアイルランドの魔女モリガンと、ホグワーツ魔法魔術学校の創設者の一人であるサラザール・スリザリンの血を引く純血の魔女でした。 叔母であるゴームレイス・ゴーントによる虐待から逃れるためアメリカ大陸へ渡り、そこでノー・マジ (マグル) のジェームズ・スチュワードと結婚しました。彼女の人生は、純血主義を掲げるゴーント家の闇の歴史とは対照的に、寛容と愛に満ちたものであり、北アメリカの魔法社会の基礎を築く上で中心的な役割を果たしました。彼女に関する詳細な物語は、主に公式サイト Pottermore で明かされています。

以下の経歴は、J.K. ローリングがウェブサイト Pottermore で発表した「イルヴァーモーニー魔法魔術学校」の記述に基づいています。

  • 早年生活

イゾルトは1603年頃、アイルランドのケリー県、クームラフラの谷で生まれました。父ウィリアム・セイアは純血の魔法使いで、伝説的な魔女モリガンの子孫でした。母リオナク・ゴーントは、サラザール・スリザリンの直系の子孫である悪名高きゴーント家の一員でした。両親はノー・マジの隣人たちに親切でしたが、イゾルトが5歳の時、実の叔母であるゴームレイス・ゴーントによって自宅を襲撃され、殺害されてしまいます。ゴームレイスは、妹夫婦がノー・マジと親しくすることがゴーント家の純血の血を汚すと考え、犯行に及んだのです。

  ゴームレイスはイゾルトを「救出」したように装い、彼女を引き取りましたが、その生活は監禁同然でした。彼女はイゾルトが[[ホグワーツ]]から入学許可証を受け取ることを妨害し、外部との接触を一切断たせ、純血主義の思想を植え付けようとしました。しかし、イゾルトは密かに母が語ってくれた[[ホグワーツ]]の物語を心の支えにしていました。17歳の時、イゾルトはゴームレイスが所有していた[[サラザール・スリザリンの杖]]を盗み出し、家から逃亡しました。
* **アメリカへの逃亡**
  イゾルトは「エリアス・ストーリー」という名の[[マグル]]の少年に変装し、1620年にメイフラワー号に乗ってアメリカ大陸へと渡りました。当初は他の魔法使いを警戒して隠遁生活を送っていましたが、ある日、森の中で[[ハイドビハインド]]に襲われそうになっていた二人の少年、[[チャドウィック・ブート]]と[[ウェブスター・ブート]]を救出します。
  瀕死の重傷を負っていた少年たちを看病する中で、彼女は[[ノー・マジ]]の青年[[ジェームズ・スチュワード]]と出会います。ジェームズは少年たちの墓を掘る手伝いを申し出ましたが、イゾルトの魔法による看護で少年たちが回復するのを見て、魔法の存在を知ることになりました。イゾルトとジェームズは次第に惹かれ合い、養子となった少年たちと共に家族として暮らし始めます。
* **イルヴァーモーニーの創設**
  チャドウィックとウェブスターが11歳になり、魔法の教育を必要とするようになると、イゾルトはかつて夢見た[[ホグワーツ]]のような学校を自分たちの手で創ることを決意します。彼女は幼少期に両親と暮らした家の名前にちなんで、その学校を[[イルヴァーモーニー]]と名付けました。
  彼らはマサチューセッツ州の[[グレイルック山]]の山頂に石造りの校舎を建て、学校の4つの寮を、それぞれが好きな魔法動物にちなんで名付けました。
  - **[[ホーンド・サーペント]] (角水蛇)**:イゾルトが選んだ寮。
  - **[[ワンプス]] (ワンプスキャット)**:ウェブスターが選んだ寮。
  - **[[サンダーバード]] (雷鳥)**:チャドウィックが選んだ寮。
  - **[[パクワジ]] (パックワジ)**:ジェームズが選んだ寮。
  やがてイゾルトとジェームズは結婚し、[[マーサ・スチュワード]]と[[リオナク・スチュワード]]という双子の娘をもうけました。学校は徐々に評判を呼び、北アメリカ中の魔法族の子供たちが集まるようになりました。
* **ゴームレイスの襲来とその後**
  イゾルトが使っていた[[サラザール・スリザリンの杖]]を通じて、ゴームレイスはついに彼女の居場所を突き止めます。ゴームレイスは強力な[[闇の魔術]]を使い、[[パーセルタング]]で杖を眠らせてイゾルトを無力化し、[[イルヴァーモーニー]]を襲撃しました。
  絶体絶命の危機に陥ったイゾルトたちを救ったのは、かつてイゾルトが命を助けた[[パクワジ]]のウィリアムでした。ウィリアムは毒矢でゴームレイスの心臓を射抜き、彼女を倒しました。この事件の後、眠らされた[[サラザール・スリザリンの杖]]は校庭に埋められ、そこから不思議な力を持つスネークウッドの木が育ったとされています。
  イゾルトとジェームズは、その後も共同で校長として[[イルヴァーモーニー]]を運営し、共に100歳を超えるまで長生きしました。

イゾルトの外見に関する詳細な描写は少ないですが、Pottermore の挿絵では黒髪の女性として描かれています。彼女の性格は、その血筋であるゴーント家とは正反対のものでした。

  • 慈悲深く寛容:両親から受け継いだ性質で、ノー・マジや異なる背景を持つ人々に対して偏見を持たず、ノー・マジであるジェームズと結婚し、共に学校を設立しました。
  • 勇敢で意志が強い:虐待的な環境から自力で脱出し、未知の大陸で生き抜き、家族と学校を命がけで守りました。
  • 理想主義者:彼女が設立したイルヴァーモーニーは、生徒自身が寮を選ぶというホグワーツよりも民主的な制度を採用しており、彼女の理想が反映されています。
  • サラザール・スリザリンの杖:イゾルトがゴームレイスのもとから逃げ出す際に持ち出した、強力な魔杖。ゴームレイスによって機能を停止させられた後、イルヴァーモーニーの敷地に埋められました。
  • ゴルディオスの結び目のブローチ:母リオナクの形見である、ゴルディオスの結び目をかたどった金のブローチ。イゾルトが唯一実家から持ち出した品であり、後にイルヴァーモーニーの校章のモチーフとなりました。
  • イゾルト (Isolt):アーサー王伝説に登場する人物「イズールト (Iseult)」または「イゾルデ (Isolde)」の英語形です。特に「トリスタンとイズールト」の悲恋物語で知られていますが、イゾルトの場合は悲劇的な幼少期を乗り越え、ジェームズとの偉大な愛を成就させました。
  • セイア (Sayre):古英語または古フランス語に由来する姓で、「勝利の軍隊」などを意味する可能性があります。
  • イゾルト・セイアの詳細な物語は、映画『ファンタスティック・ビースト』シリーズの世界観を構築するため、J.K. ローリングによって2016年にウェブサイト Pottermore 上で発表されました。
  • 彼女の物語は、イギリスに残った親戚であるゴーント家が純血思想に固執し没落していったのとは対照的に、スリザリンの子孫がたどる可能性のあった別の道筋を示しています。
  • ノー・マジと結婚し、共に主要な魔法学校を設立したという彼女の功績は、魔法界の歴史において極めて革新的で寛容な行為と見なされています。