ゴブリンの作った銀製品

ゴブリンが製造した銀製品は、魔法界で最高峰の品質と美しさを持つことで知られている。その作りは極めて精巧かつ頑丈であり、しばしば宝石などで豪華な装飾が施されている。 作中で言及される代表的な例として、ゴドリック・グリフィンドールが所有したグリフィンドールの剣が挙げられる。この剣は、柄に「卵ほどもある」巨大なルビーがはめ込まれており、その刃はきらびやかな輝きを放っている。また、モリー・ウィーズリーフラー・デラクールの結婚式のために貸し出した家宝のティアラも、ゴブリン製の美しい一品である。

ゴブリン製の銀製品は、単なる美しい工芸品ではなく、ユニークで強力な魔法特性を秘めている。

  • 汚れを寄せ付けない: ビル・ウィーズリーが述べたように、ゴブリンの銀は「汚れをはじく」性質を持つ。そのため、本来は手入れが不要で、常に本来の輝きを保つことができる。
  • 自身を強化するものだけを吸収する: これがゴブリン製の銀製品が持つ最も重要かつ特異な性質である。ゴブリンの銀は、接触した物質のうち、自身をより強く、より強固にするものだけを選択的に取り込み、その力を自らのものとする。この特性により、ゴブリン製の銀製品は時間とともに劣化するどころか、むしろ強化されていく。

ゴブリン製の銀製品の歴史は、魔法使いゴブリンの間の長く複雑な関係の歴史と深く結びついている。特に「所有権」に関する考え方の違いは、両種族間の不信と対立の根源となってきた。 ゴブリンの文化では、真の所有者は製作者自身であると考えられている。魔法使いが金銭を支払って品物を手に入れたとしても、それはゴブリンからすれば「買い手が死ぬまで借りている」に過ぎず、買い手の死後は製作者(またはその一族)に返還されるべきものとされる。一方、魔法使いは一度購入した品物は永久に自分のものになると考えており、この価値観の相違がグリフィンドールの剣の所有権を巡る争いなどに発展した。 グリップフックによれば、ゴブリンたちはラグヌック一世が作った剣をゴドリック・グリフィンドールが「盗んだ」と伝承しているが、魔法使い側の歴史では、グリフィンドールは正当な対価を支払って剣を購入したとされている。

ゴブリン製の銀製品は、特に物語の終盤、第二次魔法戦争において極めて重要な役割を果たした。 その魔法特性、すなわち「自身を強化するものだけを吸収する」能力により、グリフィンドールの剣分霊箱を破壊するための鍵となった。アルバス・ダンブルドアはこの性質を見抜き、ハリー・ポッターたちが分霊箱を破壊する手段として剣を利用するよう導いた。 また、剣の所有権を巡るゴブリンと魔法使いの対立は、グリンゴッツ魔法銀行への侵入計画において重要なプロットとなった。グリップフックは剣を返還することを条件にハリーたちへの協力を約束したが、最終的には彼らを裏切り、剣を奪って逃走した。この出来事は、長年にわたる魔法界の種族間差別がもたらした悲劇的な結果を象徴している。

ゴブリン製の銀製品に関する設定の大部分は、シリーズ第7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』でグリップフックビル・ウィーズリーの口から語られることで明らかにされた。ゴブリンの「真の所有者は製作者」という考え方は、現実世界の文化財や芸術品の所有権を巡る歴史的な論争を彷彿とさせるテーマとなっている。