トレース

追跡 (トレース)

追跡 (The Trace) とは、魔法省が17歳未満のすべての魔法使いと魔女に施す、監視用の特殊な魔咒です。これにより、未成年の魔法使いがホグワーツ魔法魔術学校の敷地外で魔法を使用した際に、それを即座に探知することができます。これは未成年魔法使いの妥当な制限に関する法令を施行するための主要な手段です。

  • 種類: 監視用の魔咒、法的な束縛
  • 目的: 未成年者の校外での魔法使用を監視・禁止するため
  • 対象: 17歳未満のすべての魔法使いと魔女

追跡は、対象者本人ではなく、その周辺で魔法が使われたことを探知する仕組みです。この魔咒は、誰が呪文を唱えたかを特定することはできず、単に未成年の魔法使いの近くで魔法活動があったことを魔法省に警告するだけです。 この特性のため、追跡には大きな抜け穴が存在します。

  • 魔法族の家庭: ウィーズリー家のような純血の魔法族の家庭では、成人した魔法使いが日常的に魔法を使用しているため、子供たちの周りでは常に追跡が反応する状態にあります。そのため、魔法省はこれらの家庭での追起の反応を事実上無視し、魔法の監督を親に委ねています。
  • マグル界での誤認: マグルの世界で未成年の魔法使いの近くで魔法が使われた場合、魔法省は原則としてその未成年の子供が魔法を使ったと見なします。これは、ハリー・ポッターが2年生の夏休みに、屋敷しもべ妖精のドビーが使った浮遊術の責任を問われた事件で顕著に示されました。

追跡は、ハリーの物語において重要な役割を何度も果たしました。

  • 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』: ドビーがダーズリー家で浮遊術を使った際、魔法省は即座にそれを探知し、ハリーが魔法を使ったと誤認しました。これにより、ハリーは魔法不正使用取締局から公式な警告状を受け取ります。
  • 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』: ハリーがマージョリー・ダーズリーを怒りのあまり膨らませてしまった際、追跡が作動しました。これは重大な法令違反でしたが、脱獄したシリウス・ブラックをめぐる非常事態であったため、魔法大臣コーネリウス・ファッジによって不問に付されました。
  • 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』: 吸魂鬼 (ディメンター) に襲われたハリーが、いとこのダドリー・ダーズリーの前で守護霊の呪文を使用しました。これは追跡によって探知され、マグルの前で魔法を使用したとして、ハリーは魔法省での正式な懲戒尋問にかけられることになりました。
  • 『ハリー・ポッターと死の秘宝』: 物語の冒頭で、ハリーが17歳の誕生日を迎えることは極めて重要な出来事でした。誕生日を迎えた瞬間に追跡が自動的に解除されるため、ヴォルデモート死喰い人 (デスイーター) は、ハリーの居場所が特定できなくなる前に彼を襲撃しようと待ち構えていました。不死鳥の騎士団は、追跡が切れる直前にハリーをダーズリー家から移動させる「7人のポッター」作戦を実行しました。
  • 制限: 前述の通り、追跡は術者を特定できません。そのため、魔法使いが多く集まるダイアゴン横丁のような場所では、誰が魔法を使ったかを判別することが困難であり、その機能は実質的に制限されます。魔法省が最も厳しく監視しているのは、国際魔法使い機密保持法を破る危険性が高い、マグルの居住区での魔法使用です。
  • 解除: 追跡は、魔法使いが17歳の誕生日を迎えた瞬間に自動的に解除されます。これは魔法界における「成人」を意味し、これ以降はホグワーツの外でも合法的に魔法を使用する権利を得ます。
  • 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の冒頭で、ハリーが自室の布団の中で「ルーモス・マキシマ」を練習している場面があります。この魔法は追跡に探知されませんでしたが、これが呪文の規模が小さいためなのか、あるいはマグルに目撃されていないためなのか、理由は明確には述べられていません。(映画版では、このシーンがより明確に描かれています)