ペベレル家の紋章

ペベレル家の紋章は、極めてシンプルな幾何学図形を組み合わせたデザインである。その構成は以下の通り。

  • 三角形: 正三角形が全体の輪郭を形成する。これは三つの死の秘宝のうち、隠れみのマントを象徴している。
  • : 三角形の内部にぴったりと収まる円。これはよみがえりの石を象徴している。
  • 垂直線: 三角形の頂点から底辺まで、円を二分するように引かれた一本の直線。これはニワトコの杖を象徴している。

これら三つの要素が合わさることで、死の秘宝の存在そのものを表すシンボルとなっている。

この紋章は、それ自体に魔法の力が宿っているわけではないが、魔法界の歴史において複数の重要な意味を持つ。

  • 死の秘宝の探求者の証: ゼノフィリウス・ラブグッドによれば、この印を身につけることは、自らが「死の秘宝」の伝説を信じ、その探求者(Quester)であることを示すための静かな合図であった。これにより、同じ信念を持つ者同士が互いを認識することができた。
  • グリンデルバルドの印: 若き日のアルバス・ダンブルドアと共に死の秘宝を探し求めていたゲラート・グリンデルバルドは、このシンボルを自らの印として採用した。彼は「より大きな善のために」というスローガンの下で魔法界に恐怖を広めたため、特にヨーロッパ大陸の魔法使いの間では、この紋章は黒い魔法やグリンデルバルドの恐怖政治と結びつけて記憶されることとなった。ビクトール・クラムは、この紋章をダームストラング専門学校の壁にグリンデルバルドが刻んだものとして覚えており、強い嫌悪感を示した。

この紋章の起源は、中世の魔法使いであるペベレル三兄弟アンチオク・ペベレルカドマス・ペベレルイグノタス・ペベレル)の伝説にまで遡る。彼らがから授かったとされる三つの強力な魔法の品物、すなわち死の秘宝を象徴するものとして生まれた。

ハリー・ポッターと死の秘宝』において、この謎めいたシンボルは物語の核心を解き明かす鍵として機能する。 当初、ハリー・ポッタービル・ウィーズリーフラー・デラクールの結婚式でゼノフィリウス・ラブグッドが着けていたネックレスでこのシンボルに気づく。その後、アルバス・ダンブルドアの遺品である吟遊詩人ビードルの物語の「三人兄弟の物語」のページに、ハリー自身が書き写したものと酷似した印をハーマイオニー・グレンジャーが見つける。 ゴドリックの谷での墓石の発見を経て、三人は最終的にラブグッド氏の家を訪ね、そこで初めてこのシンボルが「死の秘宝」――ニワトコの杖よみがえりの石隠れみのマント――を統合的に表すものであることを知る。この啓示は、分霊箱を破壊するという彼らの使命と並行して存在する、もう一つの伝説の探求へと物語を導き、ダンブルドアグリンデルバルドの過去、そしてハリーとヴォルデモートの血縁的な繋がり(共にペベレル家の子孫であること)を明らかにする重要な役割を果たした。

  • このシンボルはJ.K.ローリングによって創作されたものであり、そのシンプルかつミステリアスなデザインは、シリーズ完結編の謎を象徴するものとして非常に効果的であった。
  • 物語完結後、ペベレル家の紋章はハリー・ポッターのファンダムにおいて極めて人気の高いアイコンとなった。多くのファンがアクセサリーやタトゥーのデザインとして用いており、作品のより深い伝承やテーマへの繋がりを示すシンボルとして愛されている。