ワルブルガ・ブラック

ワルブルガ・ブラック (Walburga Black) は、由緒正しい純血の魔法族であるブラック家の女当主でした。彼女はシリウス・ブラックレギュラス・アークタルス・ブラックの母親であり、夫は彼女の従兄弟にあたるオリオン・ブラックです。 物語開始時点ではすでに故人ですが、その存在はグリモールド・プレイス十二番地にある、彼女の実物大の肖像画を通して強く印象付けられています。彼女は狂信的な純血主義者であり、その肖像画は家に侵入する「汚れた血」や「血を裏切る者」に対して絶えず罵詈雑言を浴びせかけ、不死鳥の騎士団のメンバーを悩ませました。彼女の遺した家と価値観は、息子たちの運命、特にシリウスの人生に暗い影を落としました。

ワルブルガは1925年にポルックス・ブラックとイルマ・クラッブの娘として生まれました。彼女はブラック家の純血の伝統を重んじる環境で育ち、従兄弟であるオリオン・ブラックと結婚しました。二人の間には、シリウス・ブラック(1959年生)とレギュラス・アークタルス・ブラック(1961年生)という二人の息子がいました。 ワルブルガは、ブラック家の価値観に反抗した長男シリウスを勘当し、家の家系図のタペストリーから彼の名前を焼き消しました。シリウスがグリフィンドール寮に組分けされ、マグルびいきのアルバス・ダンブルドアを信奉したことは、彼女にとって耐え難い裏切りでした。一方で、スリザリン寮に入り、後に死喰い人となった次男レギュラスを、彼女はブラック家の誇りと見なしていました。 レギュラスが1979年に若くして亡くなった後、ワルブルガは悲しみに暮れ、1985年に亡くなりました。彼女の死後、グリモールド・プレイス十二番地の家は荒れ果てましたが、彼女がかけた魔法により、その肖像画と屋敷しもべ妖精のクリーチャーが、ブラック家の純血主義の思想を守り続けることになります。

ワルブルガ本人の生前の姿は本文中では描写されていません。しかし、グリモールド・プレイス十二番地の玄関ホールに飾られた肖像画は、彼女の性格を雄弁に物語っています。

  • 外貌: 肖像画の中の彼女は、黒っぽいボンネットをかぶり、顔は狂乱したように引きつっています。普段はカーテンで隠されていますが、大きな物音がするとカーテンが開き、彼女が叫び始めます。
  • 性格: 彼女は非常に気位が高く、ヒステリックで、狂信的な純血主義者です。自分の価値観にそぐわない者、特にマグル生まれ半純血狼人間、そしてブラック家の名を汚したと見なす「血を裏切る者」を激しく憎悪しています。彼女の肖像画は、これらの人々を感知すると、耳をつんざくような金切り声で「汚物!」「出来損ない!」「闇の魔法の産物め!」といった罵声を浴びせます。

ワルブルガが強力な魔女であったことは、彼女が死後も家に影響を残していることから明らかです。

  • 永久接着呪文: 彼女は自身の肖像画を壁に永久接着呪文 (Permanent Sticking Charm) で固定しました。この呪文は非常に強力で、アルバス・ダンブルドアでさえも解くことができず、不死鳥の騎士団は肖像画を取り除くことができませんでした。
  • 肖像画の魔法: 自分の意思と人格を忠実に反映し、特定の刺激に反応して叫び出す魔法の肖像画を作成したこと自体が、高度な魔法技術の証です。
  • Walburga: ドイツのキリスト教の聖人「ヴァルプルガ (Walpurga)」に由来します。彼女の祝日の前夜は「ワルプルギスの夜 (Walpurgisnacht)」として知られ、魔女たちが集会を開くとされる異教の祭りでした。これはブラック家と闇の魔術との関連を示唆しています。
  • Black: 英語で「黒」を意味し、一族の髪の色や、闇の魔術への傾倒を象徴する名前です。
  • ワルブルガ・ブラックの生没年(1925年~1985年)は、作者J.K.ローリングが公開したブラック家の家系図によって初めて明らかになりました。(J.K.ローリングによる公式家系図)
  • 映画版『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』では、彼女の肖像画が叫ぶ様子が視覚的に再現されており、原作の恐ろしげな雰囲気を忠実に表現しています。