老いの杖

ニワトコの木でできており、長さは15インチ。杖の芯は、所有者に死の訪れを告げる生物であるセストラルの尻尾の毛である。杖の表面には、ニワトコの実の房に似た節くれだった彫刻が施されている。その強力さゆえに、歴史上多くの魔法使いがこの杖を識別し、追い求めてきた。

  • 無敵の杖: 老いの杖は、これまでに作られた中で最も強力なであり、その真の所有者が臨む決闘において敗れることはないとされる。
  • 忠誠心の移動: この杖の忠誠心は、前の所有者を打ち負かすことによってのみ得られる。打ち負かすとは、武装解除呪文失神呪文、あるいは殺害を意味する。ハリー・ポッタードラコ・マルフォイから忠誠心を得たように、必ずしも前の所有者を殺す必要はない。この特異なルールが、杖の血塗られた歴史を生み出す原因となった。
  • 驚異的な魔力: 真の所有者でなくとも、この杖は並外れた強力な魔法を行使できる。しかし、その真価は真の所有者の手にあって初めて完全に発揮される。
  • 修復能力: 通常のでは不可能とされるほどの高度な修復魔法が可能。ハリー・ポッターは、この杖を使って真っ二つに折れた自分自身のヒイラギ不死鳥の羽の杖を修復した。これはハーマイオニー・グレンジャーですら不可能だと考えていた偉業であった。

この杖の歴史は「血塗られた軌跡」として知られ、所有権を巡る数多の殺戮に彩られている。

  1. 起源: 吟遊詩人ビードルの物語に含まれる「三人兄弟の物語」によれば、ペベレル三兄弟の長兄アンティオク・ペベレルが、旅の途中で出会った死神から与えられたとされる。アンティオクはすぐにその力を誇示したが、眠っている間に喉を切られて杖を奪われ、杖の歴史における最初の犠牲者となった。
  2. 中世から近代へ: その後、杖は邪悪のエメリックやエグバートといった、歴史上の強力だが残忍な魔法使いたちの手に渡り、所有者が代わるたびに血なまぐさい逸話が残された。杖は「死の杖 (The Deathstick)」や「宿命の杖 (The Wand of Destiny)」といった異名で呼ばれるようになった。
  3. グレゴロビッチとグリンデルバルド: 20世紀初頭、著名な杖作りであるミューケウ・グレゴロビッチが杖を所有し、その力の秘密を解き明かそうとしていた。しかし、若き日のゲラート・グリンデルバルドが彼の工房から杖を盗み出し、新たな所有者となった。
  4. ダンブルドアの所有: アルバス・ダンブルドアは、1945年に行われた伝説的な決闘でゲラート・グリンデルバルドを打ち破り、老いの杖の正当な所有者となった。彼は杖の力を破壊するため、自分が誰にも敗れることなく自然死する計画を立てていた。
  5. 所有権の複雑な移動: 天文台の塔の戦いにおいて、ドラコ・マルフォイ武装解除呪文ダンブルドアの杖を奪ったため、知らぬ間に老いの杖の忠誠心はマルフォイに移った。セブルス・スネイプがダンブルドアを殺害したのは、ダンブルドア自身の計画によるものであり、決闘における勝利ではなかった。
  6. ハリー・ポッターへの忠誠: その後、マルフォイの館ハリー・ポッタードラコ・マルフォイの杖を力ずくで奪い取ったことで、老いの杖の忠誠心はハリーへと移動した。
  7. ヴォルデモートの誤算: ヴォルデモート卿ダンブルドアの墓から杖を盗み、スネイプこそが真の所有者だと信じて彼を殺害したが、杖はヴォルデモートに完全には服従しなかった。

ハリー・ポッターと死の秘宝』において、物語の中核をなす魔法アイテムであり、死の秘宝の一つとして登場する。 ヴォルデモート卿が究極の力を求めてこの杖を追い求める過程は、物語の主要な筋書きの一つとなっている。杖の特異な忠誠心のルールは、ホグワーツの戦いにおける最終決戦の鍵を握る。老いの杖が真の所有者であるハリー・ポッターを傷つけることを拒んだため、ヴォルデモートが放った死の呪いは彼自身に跳ね返り、その敗北を決定づけた。 この杖は力の誘惑を象徴する存在でもある。ダンブルドアが若き日に「より大きな善のために」その力を求めたのに対し、ハリーは最終的に杖の力を手放すことを選んだ。彼は自身の杖を修復した後、老いの杖をダンブルドアの墓に戻すことで、その血塗られた歴史に終止符を打とうとした。