デルミネーター

デルミネーター (Deluminator) は、一見するとごく普通のマグル製の銀のシガレットライターのように見える。普段はポケットに収まるほどの大きさである。アルバス・ダンブルドアが自身の設計で作成した、ユニークで強力な魔法道具である。 日本語版の書籍では主に「灯消しライター」(ひけしライター)と訳されている。

デルミネーターは、少なくとも二つの非常に異なる魔法の機能を持っている。

  • 光の吸収と放出
    •  デルミネーターの最も基本的な機能は、周囲の光源から光を吸収し、内部に保管することである。使用者が蓋を開けてカチッと鳴らすと、最も近くにある灯り(街灯、ろうそく、ランプなど)が消え、小さな光の球となってデルミネーターの中に吸い込まれる。
    •  再度蓋を開けてカチッと鳴らすことで、保管していた光の球を放出し、元の光源に正確に戻すことができる。この機能は、隠密行動や姿をくらます際に非常に有効である。物語の冒頭で、ダンブルドアプリベット通りの灯りをすべて消し、赤ん坊のハリー・ポッターをダーズリー家の前に安全に置くために使用した。
  • 導きと心の繋がり
    •  デルミネーターが持つ、より深く、より強力な魔法。それは、持ち主を本当に必要としている場所や人の元へ導く機能である。この機能は、愛や友情、忠誠心といった感情に反応して発動する。
    •  ダンブルドアの遺言によりデルミネーターを譲り受けたロン・ウィーズリーが、ハリーハーマイオニー・グレンジャーのもとを離れて絶望していた時、この機能が発動した。ロンがハーマイオニーの名前を口にすると、デルミネーターからハーマイオニーの声が聞こえ、青白い光の球が現れた。その光はロンの体に入り込み、彼が心の中でハリーたちの居場所を思い描くと、その場所へ瞬時に移動(姿現わし)するための道を示した。これは、ダンブルドアがロンの心の弱さと、彼の友情の強さの両方を見抜いていたことを示している。

デルミネーターはアルバス・ダンブルドアによって発明された。彼がいつ、どのような経緯でこれを作成したかは不明だが、彼の独創的な魔法能力の証と言える。

  1. 1981年: ダンブルドアヴォルデモート卿に殺害されたポッター夫妻の息子、ハリー・ポッターをリトル・ウィンジングのプリベット通り4番地に住むダーズリー家に預ける際に使用した。
  2. 1995年: 不死鳥の騎士団のメンバーであるアラスター・ムーディが、ハリーをダーズリー家から護送する際にデルミネーターを借りて使用した。
  3. 1997年: ダンブルドアは死後、その遺言を通じてデルミネーターをロン・ウィーズリーに遺した。当初、魔法省大臣であったルーファス・スクリムジョールは、これが何か闇の魔術に関連する道具ではないかと疑ったが、ロンはその場で基本的な光を消す機能しか実演できなかった。
  4. 第二次魔法戦争中: 分霊箱を探す旅の途中でハリーと喧嘩別れしたロンは、このデルミネーターの導きによって二人のもとへ帰還し、友情を修復した。その後、マルフォイの館からの脱出の際には、地下牢の灯りを消して混乱を引き起こすために使用され、一行の脱出に貢献した。

デルミネーターは単なる便利な魔法道具ではなく、物語の重要な局面でプロットを動かす鍵となる。

  • ダンブルドアの先見性の象徴: ダンブルドアロンにこの道具を遺したことは、彼がロンの離脱を予期し、それでもなおロンが友人のもとへ戻ることを信じていた証である。それは、愛と友情の力を信じるという、ダンブルドアの哲学を体現している。
  • 友情の試金石と再結束の鍵: ロンがデルミネーターを使って帰還する場面は、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人の絆が試され、そしてより強固になるための重要な転換点となった。デルミネーターがなければ、三人の旅は失敗に終わっていた可能性が高い。
  • 希望の光: 最も暗く、絶望的な状況において、デルミネーターは文字通り、そして比喩的にも「光」をもたらす存在として機能した。
  • 『ハリー・ポッターと賢者の石』の英国初版では、この道具は “Put-Outer“(灯消し器)と呼ばれていた。後の版や米国版で “Deluminator” という名称に変更され、定着した。日本語版では一貫して「灯消しライター」という訳語が用いられている。
  • 映画版では、デルミネーターのデザインや光の表現が視覚的に描かれており、特にロンが導かれるシーンでは、光の球が彼の胸に飛び込む様子が印象的に演出されている。