ポッター夫妻

ポッター夫妻とは、ジェームズ・ポッターリリー・ポッター (旧姓エバンズ) の二人を指す呼称である。夫妻は不死鳥の騎士団のメンバーであり、ヴォルデモート卿に勇敢に立ち向かった。息子ハリー・ポッターヴォルデモート卿から守るための自己犠牲、特にリリーの愛に基づく犠牲は、物語全体の基盤となる極めて強力な魔法を生み出し、ハリーの運命を決定づけた。彼らの死は第一次魔法戦争の終結を象徴する出来事であり、その生涯と遺産はシリーズを通じて息子ハリーの行動と精神に大きな影響を与え続ける。

ジェームズとリリーは1971年から1978年までホグワーツ魔法魔術学校に在学し、二人ともグリフィンドール寮に所属していた。 ジェームズ・ポッターは純血の家系に生まれ、才能豊かなクィディッチ選手(チェイサー)であり、友人のシリウス・ブラックリーマス・ルーピンピーター・ペティグリューと共に「いたずら仕掛け人 (The Marauders)」として知られていた。彼は非常に聡明であったが、特にセブルス・スネイプに対しては傲慢でいじめを行う一面もあった。在学中に非合法でアニマガス(牡鹿)に変身する能力を習得した。7年生の時には監督生 (Head Boy) に選ばれている。 リリー・ポッター (旧姓エバンズ) はマグル生まれの魔女であり、その才能はホラス・スラグホーン教授から特に高く評価されていた。彼女は心優しく、正義感が強かったため、当初はジェームズの傲慢な態度を嫌っていた。幼馴染であったスリザリン寮のセブルス・スネイプとは親友だったが、彼が闇の魔術に傾倒し、彼女を「穢れた血 (Mudblood)」と呼んだことで友情は決裂した。リリーもまた7年生で監督生 (Head Girl) に選ばれた。 当初リリーはジェームズを避けていたが、彼が成熟するにつれて徐々に惹かれ合い、卒業後まもなく結婚した。

ホグワーツ卒業後、ポッター夫妻はアルバス・ダンブルドアが率いる不死鳥の騎士団に加入し、ヴォルデモート卿とその信奉者である死喰い人と積極的に戦った。夫妻は三度にわたりヴォルデモート卿の魔の手を逃れたことが記録されている。 シビル・トレローニーによって予言された「7月の終わりに生まれる、闇の帝王を打ち破る力を持つ男の子」が自分たちの息子ハリー・ポッターを指している可能性を知った夫妻は、ゴドリックの谷にある自宅で忠誠の呪文を用いて身を隠すことを決意した。

当初、夫妻は秘密の守人 (Secret-Keeper) として親友のシリウス・ブラックを指名するつもりだった。しかし、シリウスはヴォルデモート卿が自分を狙うと考え、より目立たないピーター・ペティグリューを守人にすることを提案した。夫妻はこの提案を受け入れたが、ペティグリューは既にヴォルデモート卿に寝返っており、夫妻の居場所を密告した。 1981年10月31日のハロウィーンの夜、ヴォルデモート卿ゴドリックの谷のポッター家を襲撃した。ジェームズは杖を持たないままヴォルデモート卿に立ち向かい、ハリーとリリーが逃げる時間を稼ごうとしたが、死の呪いを受けて殺害された。リリーは息子のハリーを守るために命乞いを拒否し、自ら盾となってヴォルデモート卿の前に立ちはだかった。彼女の愛に基づく自己犠牲は、古代の強力な守護の魔法となり、ハリーの体に宿った。その結果、ヴォルデモート卿がハリーに対して放った死の呪いは跳ね返り、彼自身の肉体を破壊することになった。

ポッター夫妻の姿は、物語の中で何度か霊的な形で現れる。

  • 外見: 身長が高く痩せ型。父から息子ハリーに遺伝した、後頭部が逆立つ癖のある黒髪と、ヘーゼル色の瞳が特徴。丸い眼鏡をかけていた。
  • 性格: 非常に勇敢で友人に忠実な一方で、学生時代は傲慢で目立ちたがり屋な一面があった。しかし、彼は正義のためには命を懸けることを厭わない強い意志を持っており、リリーへの愛を通じて大きく成長した。
  • 外見: 非常に美しい女性で、濃い赤毛と、息子ハリーに受け継がれた輝くようなアーモンド形の緑色の瞳が特徴的だった。
  • 性格: 非常に勇敢で心優しい人物。強い道徳観を持ち、不正に対してはっきりと意見する強さを持っていた。彼女の愛の深さと自己犠牲の精神は、物語における最も強力な魔法の源となった。
  • 魔法薬学: ホラス・スラグホーン教授が「教え子の中でも特に才能豊かだった」と語るほど、魔法薬学に並外れた才能を持っていた。
  • 呪文学: 非常に高度な呪文学の使い手であった。
  • 古代魔術: 彼女の自己犠牲は、ヴォルデモート卿が決して理解できなかった愛に基づく古代の守護の魔法を生み出した。これは、特定の呪文によるものではなく、愛という感情そのものが魔法となった稀有な例である。
  • 魔杖: 10と4分の1インチ、柳材、よくしなる。呪文学に適しているとされる。
  • James (ジェームズ): ヘブライ語に由来する伝統的な英語名で、「取って代わる者」を意味する。
  • Potter (ポッター): 英語の職業姓で「陶芸家」を意味する。作者は幼少期からこの名前を気に入っていたと語っている。
  • Lily (リリー): 「ユリ」の花を意味し、西洋文化では純潔、無垢、再生の象徴とされる。彼女の自己犠牲の性質を強く反映している。
  • Evans (エバンズ): ウェールズ起源の一般的な姓。
  • ジェームズの両親であるフリーモント・ポッターとユーフェミア・ポッターは、ジェームズを高齢で授かった後、彼がホグワーツを卒業する前にドラゴン痘で亡くなったとされる。(Pottermore)
  • 映画版では、写真や回想シーンで登場する若い頃の夫妻と、蘇りの石によって現れる霊体の夫妻は、異なる年齢の俳優によって演じられている。(映画設定)