ユニコーンの血

ユニコーンの血は、月明かりの下で輝く、濃い銀白色の液体です。『ハリー・ポッターと賢者の石』において、ハリー・ポッター禁じられた森で目撃した際には、地面に広がった銀色の血溜まりとして描写されました。その美しさは、それが由来する生物の純粋さを象徴しています。

ユニコーンの血は、極めて強力かつ危険な魔法物質として知られています。その最も有名な特性は、延命効果とそれに伴う恐ろしい呪いです。

  • 延命効果: 死の淵にある者、すなわち死ぬまであと一寸という状態の人間であっても、その命をつなぎとめることができます。これは、肉体を失いかけたヴォルデモート卿が、生き永らえるために用いた方法でした。
  • 呪い: この延命効果を得るためには、純粋で無防備なユニコーンを殺すという、極めて邪悪な行為を犯さなければなりません。ケンタウルスのフィレンツェによれば、神聖な生き物の血で自らを救った者は、その血が唇に触れた瞬間から、半死半生の呪われた人生 を送ることになります。この呪いは、魔法界では広く知られており、ホラス・スラグホーンも「ユニコーンを殺すとは、何たる凶行」と述べています。

ユニコーンの血を飲むことによる呪いは、古くから魔法界に伝わる知識です。特に、ユニコーンを神聖な生き物として崇めるケンタウロスたちは、それを殺す行為を最大限の冒涜と見なしています。 ヴォルデモート卿は、最初の敗北後、霊魂だけの存在となった自らの命を維持するため、アルバニアの森で蛇の体を乗っ取り、その後クィリナス・クィレルに憑依して、禁じられた森で複数のユニコーンを殺害し、その血をすすりました。彼は、賢者の石を手に入れて完全な肉体を取り戻すまでの、一時しのぎとしてこの方法を選びました。

  • 『ハリー・ポッターと賢者の石』: ユニコーンの血は、物語序盤におけるヴォルデモート卿の存在と、その邪悪な本質を読者に示す重要な要素です。ハグリッドと共に禁じられた森での罰則を受けたハリーは、何者かがユニコーンの血を飲む現場を目撃し、初めてヴォルデモート卿の復活が近いことを実感します。また、フィレンツェから呪いについて教わることで、ハリーは自己犠牲(母の愛)と自己利益のための他者犠牲(ユニコーン殺し)という、シリーズ全体の中心的なテーマに初めて触れることになります。
  • 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』: ホラス・スラグホーン魔法薬学の授業で、強力な魔法薬の材料としてユニコーンの血が言及されます。これは、1年生の時の恐ろしい出来事をハリーに思い出させると同時に、この物質が持つ暗い評判を再確認させる役割を果たしました。
  • 象徴性: 西洋の伝承において、ユニコーンは純粋、無垢、高潔の象徴です。その血を飲むという行為は、自己の延命のために最も純粋なものを汚し、殺すという究極の利己的行為を象徴しており、ヴォルデモート卿のキャラクターを深く描き出しています。
  • 映画での描写: 映画版では、ユニコーンの血は原作の銀白色とは異なり、粘性のある暗い液体として描かれることがあります。また、飲むシーンではその呪われた性質が視覚的に強調されています。(映画設定)