リリー・ポッター (Lily Potter)

リリー・ポッター(旧姓エバンズ)は、ハリー・ポッターの母親であり、ジェームズ・ポッターの妻です。マグル生まれの非常に才能ある魔女であり、ホグワーツ魔法魔術学校ではグリフィンドール寮に所属し、監督生も務めました。彼女は第一次魔法使い戦争において不死鳥の騎士団のメンバーとしてヴォルデモート卿に立ち向かいました。リリーの最も重要な功績は、息子ハリーへの愛によって死の際に強力な古代の守りの魔法を生み出したことです。この犠牲の魔法がヴォルデモート卿死の呪い>アバダ・ケダブラを跳ね返し、ハリーの命を救うと共に、物語全体の根幹をなす保護の力を彼に与えました。

リリー・エバンズはマグルであるエバンズ夫妻の次女として生まれ、姉にペチュニア・ダーズリーがいます。幼少期に自身の魔法の力に気づき、同じ町に住んでいたセブルス・スネイプと友人になりました。スネイプは彼女に魔法界の存在を教えましたが、姉のペチュニアはリリーの能力を恐れ、嫉妬しました。この幼少期の経験が、姉妹の間に生涯にわたる深い溝を作りました。

11歳でホグワーツ魔法魔術学校に入学し、グリフィンドール寮に組分けされました。彼女は学業、特に薬学呪文学において並外れた才能を発揮し、ホラス・スラグホーン教授のお気に入りの生徒の一人となり、「スラグ・クラブ」に招かれました。 当初、リリーは傲慢でいじめっ子だったジェームズ・ポッターを嫌っていました。一方、幼なじみのセブルス・スネイプとの友情は、彼が闇の魔術に傾倒し、純血主義的な友人を持つようになったことで徐々にこじれていきました。5年生の時、スネイプがリリーを「穢れた血」と呼んだ事件をきっかけに、二人の友情は完全に終わりを告げました。 7年生になると、より成熟したジェームズ・ポッターと交際を始め、首席の女子生徒 (Head Girl) に選ばれました。

ホグワーツ卒業後、リリーはジェームズと結婚し、不死鳥の騎士団に加わってヴォルデモート卿と3度にわたり対決しました。息子ハリー・ポッターが生まれた後、ポッター家はシビル・トレローニーの予言の対象となり、ヴォルデモート卿に命を狙われることになります。 一家はフィデリウスの呪文>忠誠の呪文を用いてゴドリックの谷の隠れ家に身を隠しましたが、秘密の守人であったピーター・ペティグリューの裏切りにより、ヴォルデモート卿に居場所を突き止められました。1981年10月31日、ヴォルデモート卿が一家を襲撃します。ジェームズ・ポッターはリリーとハリーを逃がすために殺害され、リリーは息子の命乞いをし、自らの命を犠牲にしました。この自己犠牲という愛の行為が、古代の強力な魔法を発動させ、赤ん坊のハリーを死の呪い>アバダ・ケダブラから守りました。呪いはヴォルデモート卿自身に跳ね返り、彼の肉体を破壊しました。

リリーの犠牲による守りの力は、ハリーの血の中に生き続け、彼が母の血縁者(ペチュニアおばさん)と共に暮らすことで強化されました。この魔法は、シリーズを通して何度もハリーの命を救いました。物語の終盤、ハリーが禁じられた森ヴォルデモート卿と対峙する際、蘇りの石を使って呼び出した両親の霊として現れ、彼を勇気づけました。

リリーは、肩まで届く美しい濃い赤毛と、ハリーが受け継いだアーモンド形の鮮やかな緑色の瞳を持つ、非常に魅力的な女性として描かれています。 性格は非常に勇敢で、並外れて親切、そして快活でした。彼女は不正やいじめを決して許さない強い道徳観を持っていました。ホラス・スラグホーンは彼女を「私が教えた中で最も聡明な生徒の一人。快活で、魅力的で、実に才能があった」と評しています。また、友人に対しては非常に忠実でしたが、一度敵対した相手には毅然とした態度を見せることもありました。

  • 薬学 (Potions): リリーは薬学において天才的な才能を持っていました。ホラス・スラグホーン教授は、彼女がまるで直感で調合を理解しているかのようだったと述べています。
  • 呪文学 (Charms): 呪文学にも非常に長けており、オリバンダー氏によれば、彼女の杖は呪文学に適したものでした。
  • 守護霊の呪文 (Patronus Charm): 彼女の守護霊は雌鹿でした。これは後にセブルス・スネイプが彼女への愛から同じ守護霊を持つようになります。
  • 古代の魔法 (Ancient Magic): 彼女の最も強力な魔法は、愛に基づく犠牲の保護です。これは意図してかけられたものではなく、純粋な愛から生まれた非常に強力で古代の魔法でした。
  • 杖 (Wand): 柳の木、10と4分の1インチ、しなやか。(ten and a quarter inches long, swishy, made of willow
  • ハリー・ポッター (Harry Potter): 彼女の最愛の息子。リリーの愛と犠牲は、ハリーの物語全体の基盤となっています。ハリーは母親譲りの緑色の瞳を持つことで知られています。
  • ジェームズ・ポッター (James Potter): 夫。学生時代は対立していましたが、彼の成長と共に愛し合うようになりました。二人は固い絆で結ばれ、共に息子を守るために命を落としました。
  • セブルス・スネイプ (Severus Snape): 幼なじみであり、初恋の相手。スネイプは生涯にわたってリリーを愛し続けましたが、彼の闇の魔術への傾倒が二人の友情を破壊しました。彼女の死後、スネイプは彼女の息子を守ることを誓い、アルバス・ダンブルドア側の二重スパイとなりました。
  • ペチュニア・ダーズリー (Petunia Dursley): 姉。ペチュニアは妹の魔法の才能に嫉妬し、姉妹関係は疎遠でした。しかし、リリーの死後、ペチュニアはハリーを引き取り、結果的にリリーの血の守りを維持する役割を果たしました。
  • シリウス・ブラック (Sirius Black) & リーマス・ルーピン (Remus Lupin): 夫の親友であり、不死鳥の騎士団の仲間。彼らはリリーの優しさと勇気を深く尊敬していました。

「リリー(Lily)」はユリの花を意味し、キリスト教文化において純潔、無垢、そして再生の象徴とされることが多いです。特に白いユリは葬儀でよく使われ、彼女の運命を暗示しているとも考えられます。姓の「エバンズ(Evans)」は、ウェールズ起源の一般的な姓です。

  • 原作者J.K.ローリングは、シリーズ全体の中心的なテーマが「母親の愛の力」であると述べており、リリーはそのテーマを体現する最も重要なキャラクターです。(作者インタビュー)
  • 映画版では、幼少期のリリーを演じた女優の瞳は茶色であり、ハリーが母親の「緑の瞳」を受け継いだという原作の重要な設定との矛盾がファンの間で指摘されています。(映画設定)