リリー・ポッター (旧姓エバンズ) は、ハリー・ポッターの母親であり、ジェームズ・ポッターの妻です。マグルの家庭に生まれながら、非常に優れた才能を持つ魔女でした。第一次不死鳥の騎士団のメンバーとしてヴォルデモート卿と戦いましたが、息子ハリーを守るために自らの命を犠牲にしました。この愛に基づく自己犠牲は、物語の根幹をなす極めて強力な「愛の守り」を生み出し、ハリーを死の呪いから救いました。彼女の死は、物語全体の重要なきっかけとなっています。
リリーはマグルのエバンズ夫妻の次女として、スピナーズ・エンドにも近い工業都市コークワースで育ちました。姉はペチュニア・ダーズリー (旧姓エバンズ) です。幼い頃に魔力を自然に発現させましたが、家族はそのことを理解できませんでした。近所に住んでいたセブルス・スネイプと出会い、彼から自分が魔女であること、そして魔法界の存在を教えられ、二人は親友となりました。しかし、スネイプの闇の魔術への傾倒や、純血主義的な友人との交流は、次第に二人の関係に影を落としていきました。
ホグワーツ魔法魔術学校に入学したリリーは、グリフィンドール寮に組分けされました。彼女は学業、特に魔法薬学と呪文学において並外れた才能を示し、魔法薬学の教授であったホラス・スラグホーンのお気に入りの生徒の一人となりました。7年生の時には女子首席 (Head Girl) に選ばれています。 一方、ジェームズ・ポッターとその友人たちがスネイプをいじめることを、リリーは一貫して非難していました。5年生の時、暴れ柳の近くでスネイプがリリーを「穢れた血 (Mudblood)」と罵った事件をきっかけに、二人の友情は完全に断絶しました。当初はジェームズの傲慢さを嫌っていたリリーですが、7年生になる頃には彼の人間的な成長を認め、交際を始めました。
ホグワーツ卒業後、リリーはジェームズと結婚し、二人で不死鳥の騎士団に加わり、台頭するヴォルデモート卿とその信奉者である死喰い人との戦いに身を投じました。夫妻はヴォルデモートを三度にわたって撃退したとされています。 やがて、息子ハリーがヴォルデモートを打ち破る存在であるというシビル・トレローニーの予言がなされると、ポッター一家は忠誠の呪文を用いてゴドリックの谷の隠れ家に身を隠しました。しかし、秘密の守り人に指名した旧友ピーター・ペティグリューの裏切りにより、1981年10月31日のハロウィーンの夜、ヴォルデモートの襲撃を受けます。ジェームズはリリーとハリーを逃がすために時間を稼ごうとしましたが、杖を持たないまま殺害されました。ヴォルデモートは(スネイプの懇願により)リリーに身を引くよう命じましたが、彼女はそれを拒否し、息子の身代わりとなって死の呪いを受けました。この愛に基づく自己犠牲が、ハリーの身体に古代の強力な守りの魔法を宿らせ、ヴォルデモートが放った二度目の死の呪いを跳ね返したのです。
リリーは、肩まで届く濃い赤毛と、ハリーがそのまま受け継いだアーモンド形の鮮やかな緑色の瞳を持つ、非常に美しい女性として描かれています。 性格は非常に親切で快活、そして強い正義感の持ち主でした。愛する人々を守るためには驚くべき勇敢さを示します。スネイプをいじめるジェームズたちに臆することなく立ち向かうなど、不正を許さない気概がありました。また、セブルス・スネイプの欠点や周囲からの評判を知りながらも、彼の中に善性を見出し、長く友人であり続けたことから、人を深く理解しようとする優しさも持ち合わせていました。
リリーは、アルバス・ダンブルドアやホラス・スラグホーンなど、多くの人物から「極めて才能のある魔女」と評されています。