生ける屍 (インフェリウス, Inferius) は、闇の魔術によって魔法をかけられ、術者の操り人形として動く人間の死体である。外見は死体そのものであり、氷のように冷たく、青白い肌をしており、目は窪んで何も見ていない。長期間水中に潜んでいることが多く、その姿はやつれて恐ろしい印象を与える。 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』でハリー・ポッターとアルバス・ダンブルドアが遭遇した生ける屍は、やせ衰えた男女や子供の姿をしており、全員が白く濁った目を持っていた。
生ける屍は、術者である闇の魔法使いの命令を忠実に実行する番人として利用される。彼らは自身の意思や魂を持たず、思考能力もないため、複雑な障害を乗り越えることはできない。しかし、物理的な力は非常に強く、集団で獲物に襲いかかる。主な攻撃方法は、犠牲者を生きたまま水中に引きずり込み、溺死させることである。 彼らの最大の弱点は熱と光であり、これらを極端に恐れる性質を持つ。したがって、インセンディオのような炎を生み出す呪文が最も効果的な対抗策となる。アルバス・ダンブルドアは巨大な火の縄を操り、湖から現れた無数の生ける屍を退けた。
生ける屍の軍団を組織するという考えは、ヴォルデモート卿以前にも存在した。悪名高い闇の魔法使いであるゲラート・グリンデルバルドも、生ける屍の軍隊を組織することを計画していたとされる。 ヴォルデモート卿は、自身の分霊箱の一つであるサラザール・スリザリンのロケットを隠した洞窟の湖に、彼が殺害したであろう魔法使いやマグルの死体からなる無数の生ける屍を配置した。これらは、分霊箱に近づこうとする侵入者を排除するための、恐るべき防衛機構であった。 また、アルバス・ダンブルドアは『吟遊詩人ビードルの物語』の注釈の中で、生ける屍と蘇りの石によって呼び戻された者の違いを明確に説明している。生ける屍は魂のないただの操り人形であるのに対し、蘇りの石で呼び戻された者は、元の人物の魂の影を伴っている。
生ける屍は、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』のクライマックスで重要な役割を果たす。ハリー・ポッターとアルバス・ダンブルドアが分霊箱を求めて洞窟を訪れた際、分霊箱を護っていた絶望の薬をダンブルドアが飲み干した後、湖から出現した。 ハリーが湖の水を飲もうとしたことで生ける屍の集団が目覚め、彼を水中に引きずり込もうとする。衰弱しきっていたダンブルドアは最後の力を振り絞り、強力な炎の魔法で生ける屍を撃退し、ハリーを救った。この戦いでダンブルドアは魔力を大幅に消耗し、その後の天文台の塔でのセブルス・スネイプとの対決、そして死に至る悲劇の遠因となった。この出来事は、ヴォルデモート卿の残忍さと、人間の命を道具としてしか見なさない非道な性質を象徴している。