セストラル
概要
セストラル (Thestral) は、骸骨のように痩せこけた黒い馬に、コウモリのような革質の翼が生えた姿をした、肉食性の魔法生物である。その最も顕著な特徴は、死を目撃し、その意味を真に理解した者にしか姿が見えないという点にある。この性質のため、多くの魔法使いからは不吉な存在だと誤解されているが、実際には非常に知的で穏やかな性質を持つ。ホグワーツ魔法魔術学校では、禁じられた森に飼育されている群れがおり、上級生をホグズミード駅から城まで運ぶ馬車の牽引役を務めている。
描写と特徴
- 外見: セストラルは一見すると恐ろしい印象を与える。体は黒く、皮膚の下の骨が浮き出ており、骸骨の馬のようである。頭部はドラゴンのようで、瞳孔のない真っ白な目をしている。背中からは、巨大で革のような質感の翼が生えている。
- 可視性: セストラルは、死を目の当たりにし、その概念と重大さを受け入れた者にしか見えない。ハリー・ポッターは、セドリック・ディゴリーの死を経験した後の5年生の初めに初めてセストラルを視認した。ルーナ・ラブグッドやネビル・ロングボトムも、それぞれ家族の死を経験しているため、セストラルを見ることができる。
- 性質: 外見に反して、セストラルは非常に賢く、穏やかな生物である。一度飼いならされると、乗り手に対しては忠実で、目的地まで正確に運ぶことができる。肉食性であり、血の匂いに引き寄せられる。ホグワーツでは、ルビウス・ハグリッドが森で捕獲した動物の死骸などを餌として与えている。
魔法の能力と特性
- 分類: 魔法省による魔法生物の分類では、「XXXX(危険/専門知識が必要/熟練魔法使いのみ取扱可能)」に指定されている。(幻の動物とその生息地)
生息地と飼育
セストラルは、主にイギリス諸島およびアイルランド原産の生物と考えられている。ホグワーツ魔法魔術学校では、アルバス・ダンブルドアの許可のもと、魔法生物飼育学の教授であるルビウス・ハグリッドが禁じられた森で群れを飼育している。この群れは、ホグワーツの2年生以上の生徒を運ぶ馬車を引くために利用されているが、ほとんどの生徒には馬車がひとりでに動いているようにしか見えない。
物語における役割
- ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団: ハリー・ポッターが初めてセストラルを認識し、その存在を通してルーナ・ラブグッドとの絆を深める。物語のクライマックスでは、ハリー、ロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャー、ジニー・ウィーズリー、ネビル・ロングボトム、そしてルーナ・ラブグッドが、6頭のセストラルに乗ってホグワーツからロンドンの魔法省へと飛行した。
名前の語源
「Thestral」という名前の由来は明確ではないが、古英語で「闇」や「暗闇」を意味する “thester” に関連している可能性がある。また、その幽霊のような姿から「幽霊の」を意味する “spectral” との言葉遊びも考えられる。
舞台裏情報
- ハリー・ポッターと炎のゴブレット の最後で、ハリーがセドリック・ディゴリーの死を目撃したにもかかわらず、すぐにセストラルが見えなかった理由について、作者は「死を目撃しただけでなく、その喪失感と現実を完全に理解したときに初めて見えるようになる」と説明している。ハリーがその衝撃を乗り越えるには時間が必要だったためである。(J.K. ローリングのインタビュー)
- 映画 ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 では、ゲラート・グリンデルバルドが護送中にセストラルの引く馬車を利用して逃亡する場面が描かれている。(映画設定)