モーフィン・ゴーント

モーフィン・ゴーント (Morfin Gaunt) は、サラザール・スリザリンの最後の直系子孫であるゴーント家の一員であり、純血の魔法使いです。彼はマールヴォロ・ゴーントの息子であり、メローピー・ゴーントの兄、そしてトム・マールヴォロ・リドル(後のヴォルデモート卿)の叔父にあたります。モーフィンは、一族の血統に対する狂信的な誇りとマグルへの激しい憎悪を体現する人物であり、その生涯は悲劇的なものでした。彼の記憶は、ヴォルデモート卿の過去と分霊箱の秘密を解き明かす上で、極めて重要な役割を果たしました。

モーフィンは、かつては富裕であったものの、彼が生まれた頃にはすっかり困窮し、リトル・ハングルトンの村外れにある不潔な小屋で暮らしていました。彼は父マールヴォロ・ゴーントから徹底した純血至上主義を教え込まれ、妹のメローピー・ゴーントが近所に住む裕福なマグルの青年トム・リドル・シニアに恋心を抱いていることを軽蔑し、彼女を虐待していました。彼は生まれつきのパーセルマウスであり、人間と話す際もほとんどパーセルタングしか使いませんでした。 1925年、魔法省の役人であるボブ・オグデンが、モーフィンがマグルを攻撃した件で召喚状を持ってゴーント家を訪れた際、モーフィンはオグデンを攻撃しました。この事件により、彼は父マールヴォロと共にアズカバンへ送られ、3年間服役しました。 彼が刑期を終えて家に戻ったときには、父は既に亡く、妹のメローピーは一族の貴重な家宝であるサラザール・スリザリンのロケットを持ってトム・リドル・シニアと駆け落ちした後でした。モーフィンは、妹が「汚れた血」と結婚したことを一族の恥と考え、孤独と憎悪の中で暮らし続けました。 数年後、彼の甥にあたる若きトム・マールヴォロ・リドルが、自らの出自を求めて彼の小屋を訪れます。モーフィンはトムにゴーント家の歴史と、彼の父親が近所に住むマグルであったことを語りました。この情報に激怒したトムは、モーフィンを気絶させ、彼の杖を奪うとリドルの屋敷へ向かい、父親、祖父、祖母の三人を殺害しました。その後、トムはモーフィンの元へ戻り、彼に偽の記憶を植え付け、殺人の罪をなすりつけました。モーフィンは犯行を「自白」し、リドル一家殺害の罪で再びアズカバンに投獄され、終身刑を宣告されました。 彼の無実を疑っていたアルバス・ダンブルドアが、数十年後にアズカバンのモーフィンを訪ね、巧みに本当の記憶を引き出すことに成功します。しかし、モーフィンはその記憶がダンブルドアによってペンシーブで検証され、彼の無実が証明される前に、獄中で亡くなりました。

モーフィンの外見は非常に不潔で、もつれた髪は汚物で固まり、歯はほとんど抜け落ちていました。彼の最も際立った特徴は、互いに違う方向を向いている奇妙な目でした。 彼の性格は極めて暴力的かつ不安定で、純血の血統に異常なまでの誇りを持っていました。彼はマグルや、魔法の力が弱いと見なした妹のメローピーを激しく軽蔑していました。彼は人間とのコミュニケーションにおいてもパーセルタングを好んで使い、その精神は長年の孤独と憎悪、そしてアズカバンでの生活によって完全に蝕まれていました。

  • パーセルタング (Parseltongue): サラザール・スリザリンから受け継いだ、蛇と話す能力。彼は日常会話のほとんどをこの言語で行っていました。
  • 決闘と呪い (Dueling and Curses): 彼はマグル魔法省の役人に対して躊躇なく呪いを使うなど、攻撃的な魔法を用いる傾向がありました。しかし、全体的な魔法の腕前が特に優れていたという描写はありません。
  • 魔杖 (Wand): 彼の杖の仕様(芯や材質)は不明です。この杖は、トム・マールヴォロ・リドルによってリドル一家殺害の凶器として使われました。
  • マールヴォロ・ゴーント (Marvolo Gaunt): 父親。モーフィンは父の純血思想を忠実に受け継ぎ、彼の期待に応えようとしていました。しかし、マールヴォロもまた息子や娘に対して暴力的でした。
  • メローピー・ゴーント (Merope Gaunt): 妹。彼はメローピーがスクイブに近い存在だと見下し、彼女のマグルへの恋心を嘲笑し、日常的に虐待していました。
  • トム・マールヴォロ・リドル (Tom Marvolo Riddle): 甥。モーフィンは彼にゴーント家の血筋に関する重要な情報を与えましたが、その結果、リドル一家殺害の濡れ衣を着せられ、人生の残りをアズカバンで終えることになりました。彼は甥によって利用され、破滅させられた犠牲者です。

「Morfin」という名前は、ウェールズ神話に登場する「Morfran」に由来する可能性があります。神話のMorfranは、その醜さで知られており、モーフィンの不潔で不健康な外見と共通しています。

  • 映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では、モーフィン・ゴーントのキャラクターと彼に関連する記憶の場面は完全にカットされています。(映画の設定)
  • 映画版では、ダンブルドアがモーフィンから真実の記憶を抽出する代わりに、口頭でハリーにリドル一家殺害の経緯を説明します。これにより、物語における彼の重要性が大幅に削減されました。(映画の設定)