ダーズリー家

ダーズリー家は、主人公ハリー・ポッターの唯一の存命の親戚であるマグルの一家です。一家は、バーノン・ダーズリー、その妻ペチュニア・ダーズリー(旧姓エバンズ)、そして息子ダドリー・ダーズリーの三人で構成されています。彼らはサリーリトル・ウィンジング女貞路4番地に住んでいます。 ダーズリー家は魔法を極端に嫌悪し、自分たちの生活が「普通」であることに異常なほど執着しています。両親を亡くしたハリーを不本意ながら引き取りますが、彼を冷遇し、魔法の存在を徹底的に隠そうとしました。物語において、彼らはハリーの過酷な幼少期を象徴する存在であると同時に、アルバス・ダンブルドアが施した「血の護り」によって、ハリーをヴォルデモート卿から守るための重要な役割を担っていました。

  • バーノン・ダーズリー: ダーズリー家の家長。ドリル製造会社グランニングズの重役。大柄で首がほとんどなく、立派な口ひげを生やしています。彼は権威的で物質主義的であり、魔法や非日常的なことすべてを病的なまでに嫌悪しています。
  • ペチュニア・ダーズリー: バーノンの妻であり、ハリーの母リリー・ポッターの実の姉。痩せていて馬のような顔立ちと、近所を覗き見するために異常に長い首を持っています。幼い頃から妹の魔法の才能に嫉妬しており、その感情が魔法界全体への憎悪へと繋がっています。
  • ダドリー・ダーズリー: バーノンとペチュニアの一人息子で、ハリーの従兄弟。両親に甘やかされて育ち、幼少期は肥満体型でいじめっ子でした。しかし、5巻で吸魂鬼に襲われた経験をきっかけに、徐々に性格に変化が見られ、最終的にはハリーとの和解を示唆する行動をとります。
  • 「普通」への執着: ダーズリー家の行動原理の根幹をなすものです。彼らは整然とした家、新しい車、世間体を何よりも重んじ、少しでも「普通」から逸脱することを極度に恐れています。
  • 魔法への嫌悪と恐怖: 夫妻の魔法への態度は、バーノンにとっては理解不能なものへの恐怖と拒絶であり、ペチュニアにとっては妹への長年の嫉妬と疎外感に根差しています。彼らはハリーの中から「魔法を叩き出そう」と試みました。
  • 物質主義: ダーズリー家の価値観は完全に物質的な豊かさに偏っており、息子ダドリーには大量のプレゼントを買い与える一方で、ハリーには必要最低限のものしか与えませんでした。
  • ハリーの保護者: ジェームズ・ポッターリリー・ポッターが亡くなった後、ダーズリー家はアルバス・ダンブルドアの要請により、赤ん坊のハリーを引き取りました。しかし、彼らはハリーを家族として扱わず、階段下の物置に住まわせるなど、長年にわたり精神的・肉体的な虐待を行いました。
  • 血の護り: ダーズリー家が物語で果たした最も重要な役割は、ハリーの安全を確保する「器」となったことです。リリーがハリーのために自らを犠牲にしたことで、母の血縁者(ペチュニア)が住む家を「我が家」と呼べる限り、ハリーは強力な古代魔術によって守られました。この保護は、ハリーが17歳になり成人するまで続きました。
  • 隠れ家: ハリーにとってダーズリー家での生活は苦痛に満ちたものでしたが、皮肉にも女貞路4番地は、彼が成人するまでヴォルデモート卿とその部下たちが決して手出しできない最も安全な場所でした。
  • 物語の終盤: 第二次魔法戦争が激化すると、ダーズリー家は不死鳥の騎士団の保護下に入り、女貞路を離れることになりました。この別れの際、ダドリーはハリーに感謝の念を示し、二人の関係に変化があったことが描かれました。
  • ダーズリー (Dursley): イギリスのグロスタシャーに実在する町の名前。作者J.K.ローリングは、その「鈍くて魅力のない響き」からこの姓を選んだと述べています。(Pottermore)
  • バーノン (Vernon): 作者が個人的に好きではなかった、ありふれた名前。(Pottermore)
  • ペチュニア (Petunia): 妹のリリー (Lily) が花の名前であることとの対比。花言葉では「憤り」や「恨み」といった意味を持つことがあります。(Pottermore)
  • 作者J.K.ローリングは公式サイトポッターモアで、ダーズリー夫妻がポッター夫妻を嫌うに至った詳細な背景を明かしています。バーノンとジェームズの初対面が最悪なものであったことや、ペチュニアが魔法界から拒絶されたと感じた嫉妬が、彼らの態度を決定づけたとされています。
  • 映画版では、ダーズリー家が女貞路を去るシーンで、ペチュニアがハリーに「あなたは母を亡くしただけじゃない。私は妹を亡くしたのよ」と語る未公開シーンが存在します。これは彼女の複雑な心境をより深く描写するものでした。(映画設定)