ゴーントの指輪
基本情報
記述と外観
金で作られた指輪で、重々しい黒い石がはめ込まれている。全体的に粗雑な作りのように見え、長年受け継がれてきた歴史を感じさせる。 黒い石にはペベレル家の紋章が刻まれており、これは後に死の秘宝のシンボルであることが判明する。アルバス・ダンブルドアが魂器として破壊した後、石には中央を貫くひび割れが生じたが、蘇りの石としての力は失われなかった。
魔法特性と用途
この指輪は、二つの強力で対照的な魔法的性質を併せ持っている。
- 魂器として:
- ヴォルデモート卿の魂の欠片を内包しており、彼の不死性の一端を担っていた。
- ヴォルデモート卿によって、指輪をはめた者を即死させることを目的とした極めて強力な呪いがかけられていた。この呪いにより、アルバス・ダンブルドアの右手は枯れ果て、彼の死期を決定づける原因となった。
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- 所有者が手の中で三度回すことにより、死者の「影」や「こだま」を現世に呼び戻すことができる。ただし、呼び戻された者は完全な生者ではなく、この世に属さない存在であるため、生者と死者の双方に苦しみをもたらす。
歴史
この指輪の起源は、ペベレル三兄弟の伝説に遡る。次男であったカドマス・ペベレルが死から与えられた蘇りの石を指輪にはめ込み、それが彼の家系に受け継がれた。ペベレル家の血を引くサラザール・スリザリンの子孫、ゴーント家は、この指輪を純血の家柄を証明する家宝として代々継承してきた。 20世紀初頭、指輪はマールヴォロ・ゴーントが所有していたが、彼の息子モーフィン・ゴーントへと渡る。1943年、若き日のトム・マールヴォロ・リドルは自身の出自を探る中でゴーント家を訪れ、叔父であるモーフィンを昏倒させて指輪を強奪した。その後、リドルは自身のマグルである父親一家を殺害し、その死を利用して指輪を自身の二つ目の魂器に変えた。 ヴォルデモート卿は、この魂器をゴーントの小屋の廃墟に魔法で隠したが、1996年の夏にアルバス・ダンブルドアによって発見される。蘇りの石の力に魅了されたダンブルドアは、亡き家族に会いたいという長年の願望から衝動的に指輪をはめてしまい、かけられていた呪いによって致命的な傷を負った。セブルス・スネイプの尽力で呪いの進行は抑えられたものの、余命は約一年と宣告された。その後、ダンブルドアはグリフィンドールの剣を用いて指輪の魂器としての性質を破壊した。 ダンブルドアは自身の死後、石をハリー・ポッターが初めて捕らえた金のスニッチに隠して遺した。ハリーは禁じられた森でヴォルデモート卿と対峙する直前、スニッチを開けて石を使用。両親であるジェームズ・ポッターとリリー・ポッター、そしてシリウス・ブラック、リーマス・ルーピンの霊的な姿を呼び出し、彼らから死に立ち向かう勇気を得た。対決後、ハリーは石を禁じられた森の中に落とし、その強大な力が二度と悪用されることのないようにした。
物語における役割
ゴーントの指輪は、物語の二つの主要なプロットライン、すなわち「魂器探し」と「死の秘宝の伝説」とを結びつける、極めて重要な役割を果たす。 魂器としては、トム・リドルの日記に次いで二番目に破壊された魂器であり、その捜索と破壊の過程がダンブルドアの死の直接的な原因となった。これにより、ハリー・ポッターたちはダンブルドアの導きなしに魂器探しの旅を続けなければならなくなる。 同時に、蘇りの石としては、ハリーが死の運命を受け入れ、最終決戦に臨むための精神的な支えを与えた。この経験を通じて、ハリーは死の秘宝の真の主となるための資質を示した。また、この指輪はアルバス・ダンブルドアの人間的な弱さや過去の過ちを象徴するアイテムとしても機能しており、彼のキャラクターに深みを与えている。
舞台裏情報
映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では、ダンブルドアが指輪を発見する場面や、呪いにかかる瞬間が回想シーンとして視覚的に描かれている。原作ではダンブルドアがハリーに語る形で説明されるが、映画ではより直接的な描写がなされている。(映画設定)