マートラップの抽出液

マートラップの抽出液は、黄色がかった液体です。この液体の中には、魔法生物であるマートラップの背中に生えている触手のような突起物を酢漬けにしたものが入っています。使用する際には、この液体に患部を浸すか、直接傷口に注いで使用します。

この抽出液の主な魔法的特性は、鎮痛治癒促進です。主に切り傷や咬み傷の治療に用いられ、痛みを和らげ、傷の回復を早める効果があります。 その効果は非常に高く、ドローレス・アンブリッジが罰則で使用させた、自身の血で文字を書かせるブラック・クイルによって負ったハリー・ポッターの手の甲の深い切り傷の痛みを、即座に和らげました。また、闇の魔術に関連する傷にも一定の効果を示します。ナギニに咬まれたハリー・ポッターの腕の傷に対し、ハーマイオニー・グレンジャーが応急処置として使用し、治癒を助けました。

マートラップの抽出液は、特定の歴史的ないきさつを持つユニークなアイテムではなく、魔法界で広く使われている一般的な治療薬です。その起源は、マートラップという魔法生物の持つ治癒特性の発見に遡ります。魔法薬の調合師や薬屋によって製造され、多くの魔法使い家庭の救急用品として常備されています。

マートラップの抽出液は、物語において重要な治療薬として二度登場し、いずれもハーマイオニー・グレンジャーの用意周到さと友人への深い思いやりを象徴するアイテムとして機能しました。

  • 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』: ドローレス・アンブリッジによる罰則でブラック・クイルを使わされ、手の甲に深い傷を負ったハリー・ポッターに対し、ハーマイオニーがこの抽出液を提供しました。これは、アンブリッジの非道な仕打ちに対するささやかな抵抗であり、ハリーが肉体的・精神的苦痛を乗り越える上での重要な支えとなりました。
  • 『ハリー・ポッターと死の秘宝』: ゴドリックの谷バチルダ・バグショットの家に偽装したナギニに襲われ、腕を咬まれたハリーの応急処置としてハーマイオニーが使用しました。この傷は分霊箱であるナギニによるものだったため、完全な治癒には至りませんでしたが、危険な状況下での貴重な治療手段として役立ちました。
  • 原料: 原料となるマートラップは、ニュート・スキャマンダー著の『幻の動物とその生息地』によると、イギリスの海岸線に生息するネズミに似た魔法生物です。その背中にはイソギンチャクのような突起物があり、これを酢漬けにすることで抽出液が作られます。
  • その他の用途:幻の動物とその生息地』には、マートラップの突起物を食べると、軽い呪い呪文への抵抗力が増すことがあると記されています。ただし、食べ過ぎると耳から紫色の毛が生えるという不快な副作用があるとされています。