動物もどき (アニメーガス)

動物もどき (Animagus、アニメーガス) とは、自らの意志で特定の動物に変身できる魔法使いまたは魔女のことである。この能力は生まれつきのものではなく、極めて高度で複雑な変身術を習得することによってのみ得られる。 変身する動物は術者が自由に選べるものではなく、その人物の性格や内面的な特性によって決定される。また、変身後の動物の姿には、人間の時の身体的特徴(例えば、眼鏡の周りの模様や失った指など)が何らかの形で反映されることが多い。 動物もどきは、人狼 (Werewolf) とは根本的に異なる。変身は完全に自らの意志で行われ、理性を失うこともない。動物の姿でいる間も、人間の知性や記憶は保持されるが、感情はより単純化される。

  • 動物の姿: 変身する動物は術者の人格を反映しており、生涯変わることはない。自身の守護霊の呪文 (Patronus Charm) と同じ動物になることも多い。
  • 身体的特徴の引き継ぎ: 人間の時の顕著な身体的特徴は、動物の姿にも引き継がれる。例えば、ミネルバ・マクゴナガルは、彼女がかけている四角い眼鏡の模様が、変身した猫の目の周りに現れる。
  • 知性の維持: 動物に変身している間も、人間の知性、思考、記憶は完全に保たれる。これにより、複雑な計画を立てたり、人間としての目的を遂行したりすることが可能である。
  • 登録義務: その強力な能力が悪用されることを防ぐため、全ての動物もどきは魔法省に自身の動物の姿や特徴を登録することが法律で義務付けられている。

動物もどきになるための過程は非常に長く、困難かつ危険を伴う。失敗した場合、人間と動物の中間の姿で永久に固定されてしまうリスクがある。 小説本編では詳細な方法は語られていないが、公式ウェブサイト Pottermore によれば、以下のような複雑な手順が必要とされる (Pottermore)。

  1. 1ヶ月間、マンドレイク (Mandrake) の葉を口に含み続ける。
  2. その葉を使って特定の条件下で魔法薬を調合する。
  3. 雷雨が来るまで特定の呪文を毎日唱え続ける。

この過程の困難さゆえに、動物もどきになろうと試みる魔法使いは少なく、成功する者はさらに稀である。

物語に登場する動物もどきの多くは、魔法省への登録を怠った「未登録」の者たちである。

    • 動物の姿: トラネコ (Tabby cat)
    • 登録状況: 登録済み
    • 特徴・備考: 目の周りに眼鏡の形をした模様がある。ホグワーツ魔法魔術学校変身術の教授として、最初の授業でこの能力を披露した。
    • 動物の姿: 大きな黒い犬 (Large black dog)
    • 登録状況: 未登録
    • 特徴・備考: あだ名は「パッドフット (Padfoot)」。この能力を使い、アズカバンから脱獄した。吸魂鬼 (Dementor) は動物の単純な感情を感知しにくいため、犬の姿でいることで彼らの監視を逃れることができた。
    • 動物の姿: ネズミ (Rat)
    • 登録状況: 未登録
    • 特徴・備考: あだ名は「ワームテール (Wormtail)」。ヴォルデモートに加担した後、自身の死を偽装し、12年間ウィーズリー家のペット「スキャバーズ」として隠れ潜んでいた。変身したネズミの姿では、ロン・ウィーズリーが指摘したように前足の指が一本欠けていたが、これは彼が自ら切り落とした人間の指に対応している。
    • 動物の姿: 甲虫 (Beetle)
    • 登録状況: 未登録
    • 特徴・備考: 日刊予言者新聞の記者。この小さな姿を利用して他人の会話を盗み聞きし、ゴシップ記事のネタを集めていた。眼鏡と同じ模様が触覚にある。

動物もどきの能力は、物語の筋書きにおいて極めて重要な役割を果たしている。特に『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』では、シリウス・ブラックの無実とピーター・ペティグリューの裏切りを解き明かす鍵となった。忍びの地図 (The Marauder's Map) に人間の名前で表示されることで、彼らの正体が暴かれた。 また、リータ・スキーターが未登録の動物もどきであるという事実は、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』において、ハーマイオニー・グレンジャーが彼女の違法な取材活動を突き止め、脅迫する材料となった。

Animagus (アニメーガス) という言葉は、ラテン語の animal (「動物」) と magus (「賢者」または「魔法使い」) を組み合わせた造語である。文字通り「動物の魔法使い」を意味する。