金色のスニッチ

金色のスニッチは、クルミほどの大きさの金色の金属球です。両側には一対の小さな銀色の翼が生えており、これを高速で羽ばたかせることで、素早く不規則に空中を飛び回ります。その動きは極めて俊敏で、クィディッチの試合中に肉眼で捉えることは非常に困難です。

クィディッチにおける役割

  • 金色のスニッチは、クィディッチの試合で使われる4つのボールのうち、最も小さく、最も重要なボールです。
  • 各チームのシーカーの役割は、このスニッチを捕獲することです。
  • スニッチが捕獲されると、その時点で試合は終了し、捕獲したシーカーのチームに150点が与えられます。この高得点により、スニッチを捕獲したチームが試合に勝利することがほとんどです。

肉の記憶 (Flesh Memory)

  • 金色のスニッチには「肉の記憶」と呼ばれる特殊な魔法がかけられています。
  • これは、スニッチに最初に素手で触れた人物を記憶する特性であり、捕獲者を巡る争いを防ぐために考案されました。
  • このため、試合開始前は、審判や魔法省の役員は手袋を着用してスニッチを取り扱います。

ダンブルドアが遺したスニッチ

  • ハリー・ポッターが1年生の時の最初の試合で捕獲したスニッチは、後にアルバス・ダンブルドアによって特別な魔法がかけられました。
  • ダンブルドアは、死の秘宝の一つである蘇りの石をこのスニッチの中に隠しました。
  • スニッチの表面には、ハリーが口に近づけた時にのみ現れる「私は終わる時に開く (I open at the close)」という謎めいたメッセージが刻まれていました。
  • このスニッチは、ハリーが死を覚悟し、それを初めて捕らえた時と同じように唇に当てた(「終わり」の時)にのみ開くように仕掛けられていました。

金色のスニッチは、かつてクィディッチで使用されていたゴールデン・スニジェットという絶滅危惧種の魔法鳥の代用品として開発されました。ゴールデン・スニジェットの乱獲を防ぐため、魔法使い評議会によって保護対象とされた後、ゴドリックの谷出身の優れた魔法金属細工師であるボウマン・ライトが、その鳥の動きと重さを再現した金属球を考案しました。これが金色のスニッチの始まりです(『クィディッチ今昔』)。 物語の中で特に重要な役割を果たすのは、1991年にハリー・ポッターホグワーツでの初めてのクィディッチの試合(グリフィンドールスリザリン)で捕らえたスニッチです。ハリーはこの時、スニッチを口で受け止め、ほとんど飲み込みそうになりました。 このスニッチは後にアルバス・ダンブルドアの手に渡り、彼は分霊箱の一つであったマールヴォロ・ゴーントの指輪から取り出した蘇りの石を内部に隠しました。 1997年、ダンブルドアの遺言により、このスニッチはハリーに遺贈されました。当初は開けることができませんでしたが、第二次魔法戦争の最終決戦において、ハリーがヴォルデモート卿と対峙する覚悟を決めた際、彼の唇に触れることで開き、中の蘇りの石を現しました。

金色のスニッチは、単なるクィディッチの道具としてだけでなく、物語全体において象徴的な役割を担っています。

  • ハリーの才能の象徴: スニッチを捕らえる能力は、ハリーが史上最年少のシーカーとなった彼の天賦の才能を象徴しています。
  • 運命の導き手: 物語の終盤では、アルバス・ダンブルドアがハリーに遺したスニッチが、彼の過去(初めての勝利)と未来(死の受容)を結びつける重要な鍵となります。
  • 死の秘宝の器: 蘇りの石を内包することで、死の秘宝の伝説とハリーの運命を直接結びつけました。ハリーが禁じられた森で両親やシリウス・ブラックリーマス・ルーピンの霊を呼び出すことを可能にし、彼に死に立ち向かう勇気を与えました。これは物語のクライマックスにおける極めて重要な場面です。
  • 名前の由来: 英語の “Snitch” には「素早く盗む」や「密告する」といった意味があり、その捕まえにくく、神出鬼没な性質を表している可能性があります。
  • 映画版のデザイン: 映画版では、金色のスニッチは非常に精巧で機械的なデザインが施されており、翼の付け根や球体の表面に複雑な模様が描かれています。(映画設定)