ヘプジバ・スミス

ヘプジバ・スミスは、裕福で年老いた魔女であり、ホグワーツ魔法魔術学校の創設者の一人、ヘルガ・ハッフルパフの遠い子孫です。彼女は貴重な魔法道具の収集家として知られており、物語においては、若き日のトム・マールヴォロ・リドル(後のヴォルデモート卿)に殺害され、サラザール・スリザリンのロケットヘルガ・ハッフルパフのカップを奪われるという悲劇的な役割を担います。彼女の記憶は、ヴォルデモート卿分霊箱を作り始めた経緯をアルバス・ダンブルドアハリー・ポッターが知るための重要な手がかりとなりました。

ヘプジバの人生の詳細はほとんど知られていませんが、彼女は裕福な純血の家系に生まれ、先祖であるヘルガ・ハッフルパフの血筋を大変誇りに思っていました。彼女は生涯を通じて、数多くの貴重な魔法の骨董品を収集していました。 彼女の最期は、憂いの篩を通してハリー・ポッターに見せられたアルバス・ダンブルドアの記憶の中で描かれています。当時、ボーギン・アンド・バークスで働いていた若きトム・マールヴォロ・リドルは、顧客としてヘプジバを定期的に訪問し、巧みな話術と魅力で彼女を篭絡していました。ある訪問の際、ヘプジバは自身の最も価値ある二つの宝物、すなわち先祖から受け継いだヘルガ・ハッフルパフのカップと、ボーギン・アンド・バークスから購入したサラザール・スリザリンのロケットをトムに見せびらかしました。トムはそれらの品々に激しい執着を見せました。 その二日後、ヘプジバ・スミスは死体で発見されました。公式には、彼女の高齢の屋敷しもべ妖精であるホーキーが、誤って主人のココアに致死性の毒を盛った事故として処理されました。ホーキーは罪を認めたため、魔法省はこの説明を受け入れました。しかし、アルバス・ダンブルドアが突き止めた真相は、トム・リドルが彼女を殺害してカップとロケットを盗み、ホーキー偽りの記憶を植え付けて罪を被せたというものでした。リドルはその後、この二つの秘宝を自身の分霊箱に変えました。

  • 外貌: 原作では「とてつもなく太った」女性として描かれています。彼女は精巧なジンジャー色の鬘をつけ、派手なフリルのついたピンクのガウンをまとい、頬には過剰なほどの頬紅を塗っていました。全体的に非常に華美で贅沢な身なりをしていました。
  • 性格: 非常に虚栄心が強く、自身の血筋と収集品を自慢することを好みました。特にハンサムな若者に弱く、トム・リドルの甘言に簡単に心を許してしまいました。感傷的で、収集家としての貪欲さも持ち合わせていましたが、そのうぬぼれと警戒心のなさが、最終的に彼女を死に追いやる致命的な欠点となりました。

ヘプジバが戦闘や実用的な魔法に長けていたことを示す描写は原作にはありません。しかし、彼女がゴブリン製の鎧やその他の希少な魔法道具を長年にわたり収集・鑑定できたことから、魔法史や魔法道具に関する深い知識を持っていたことがうかがえます。彼女の主な「才能」は、魔法使いとしての実践的な能力よりも、むしろ鑑定眼と収集能力にあったと言えるでしょう。

  • トム・マールヴォロ・リドル (ヴォルデモート卿): ヘプジバはリドルの魅力と甘言に騙され、心を開きました。しかし、リドルは彼女を利用しただけであり、目的の宝物を手に入れるために冷酷に彼女を殺害しました。
  • ホーキー: ヘプジバに仕えていた年老いた屋敷しもべ妖精。ヘプジバは彼女を典型的な主従関係として扱っていましたが、最終的にホーキーはリドルによってヘプジバ殺害の濡れ衣を着せられました。
  • ヘルガ・ハッフルパフ: ヘプジバの遠い先祖。彼女はこの偉大な魔女の末裔であることを生涯の誇りとしていました。
  • ヘプジバ (Hepzibah): ヘブライ語の「חֶפְצִי-בָּהּ」(Cheftzibah) に由来し、「我が喜びは彼女の中に」を意味します。旧約聖書の「列王記」に登場するヒゼキヤ王の妻の名前でもあります。彼女が自身の「喜び」の対象であった宝物に執着した結果、死を招いたという皮肉な運命を暗示しています。
  • スミス (Smith): 英語圏で非常に一般的な姓です。ハッフルパフの末裔という高貴な血筋を誇る彼女の性格とは対照的な、平凡な響きを持つ名前です。

映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では、ヘプジバ・スミスがトム・リドルにカップとロケットを見せる場面が撮影されましたが、最終的な劇場公開版からはカットされました。このシーンは、DVDやブルーレイに収録されている削除シーンとして見ることができます。(映画の削除シーン)