マートル・エリザベス・ウォレン

マートル・エリザベス・ウォレンは、嘆きのマートル (Moaning Myrtle) の通称で広く知られるホグワーツ魔法魔術学校の幽霊です。彼女は校舎の2階にある女子トイレに憑りついています。生前はマグル生まれの魔女で、レイブンクロー寮に所属していました (J.K. Rowling公式サイト)。1943年6月13日、当時ホグワーツの生徒だったトム・マールヴォロ・リドルが解き放ったサラザール・スリザリンバジリスクによって殺害されました。彼女の死は、リドルが最初の分霊箱であるトム・リドルの日記を作り出すために利用されました。物語においては、ハリー・ポッターに対して秘密の部屋に関する決定的な情報を提供したり、三大魔法学校対抗試合で彼を助けたりするなど、重要な脇役として機能します。

マートルはマグルの家庭に生まれ、ホグワーツ魔法魔術学校に入学し、レイブンクロー寮に組分けされました。在学中、彼女は自身の外見(特に眼鏡)を理由に、同級生のオリーブ・ホーンビーをはじめとする生徒たちから頻繁にいじめられていました。 1943年6月13日、オリーブにしつこく眼鏡のことでからかわれたマートルは、2階の女子トイレの個室に閉じこもり泣いていました。その時、彼女は男子生徒の声が奇妙な言語(パーセルタング)を話すのを聞きつけます。彼女は個室のドアを開けて、女子トイレから出ていくように言おうとしましたが、そこにいたのはサラザール・スリザリンバジリスクでした。マートルはバジリスクの巨大な黄色い目を直接見てしまい、即死しました。彼女を殺害した男子生徒はトム・マールヴォロ・リドルであり、彼はマートルの死を利用して自身の日記を分霊箱に変えました。

死後、マートルは自分をいじめたオリーブ・ホーンビーに復讐するため、幽霊となって彼女に取り憑くことを選びました。マートルはオリーブがどこへ行こうとも執拗に追いかけ続け、最終的に魔法省が介入し、彼女を死んだ場所であるホグワーツへ戻るよう強制しました。それ以来、彼女はその女子トイレに憑りつき、絶えずめそめそと泣き喚くことから「嘆きのマートル」というあだ名で呼ばれるようになりました。

ずんぐりとした体格で、陰気な顔つきをした幽霊として描かれています。生気のないまっすぐな髪をしており、分厚い真珠色の眼鏡をかけています。幽霊であるにもかかわらず、顔にはニキビがあるとしばしば描写されます。

非常に陰気で、不機嫌で、感傷的な性格です。すぐに気分を害し、自己憐憫に浸ることを好みます。また、かなり大げさなところがあり、自分をいじめたオリーブ・ホーンビーに対して死後も恨みを持ち続けるなど、執念深い一面もあります。その一方で、ハリー・ポッターに好意を抱き、彼を助けるなど、親切な面も見せます。好奇心旺盛で、ホグワーツの配管を移動して生徒たちの様子を覗き見るのが趣味です。

生前のマートルはごく普通の生徒であり、特筆すべき魔法能力については言及されていません。幽霊としての彼女は、以下のような典型的な幽霊の能力を持っています。

  • 浮遊と透過: 壁や物体を通り抜けることができます。
  • 水の操作: トイレや浴槽に飛び込むことで、物理的な水しぶきを上げることができます。これは他の幽霊には見られない、物理世界へのある程度の影響力を持つ珍しい能力です。
  • 配管の移動: ホグワーツ城内の複雑な配管網を自由に移動することができ、これを利用して城の様々な場所に現れます。
  • 眼鏡: 生前の彼女の象徴的な持ち物であり、いじめの原因となりました。彼女が殺害された日、トイレに閉じこもる直接のきっかけとなった品です。幽霊になった後も、この眼鏡をかけ続けています。
  • ハリー・ポッター: マートルはハリーに明らかに好意を寄せており、ハンサムだと評しています。彼が自分のトイレを訪れることを喜び、物語の中で二度にわたり重要な手助けをしました。
  • ドラコ・マルフォイ: 6年生の時、苦悩するドラコの意外な話し相手となりました。彼の孤独感や絶望に共感し、精神的な支えとなりました。
  • オリーブ・ホーンビー (Olive Hornby): 生前のマートルを執拗にいじめた生徒。マートルが幽霊として最初に行ったことは、オリーブに復讐することでした。
  • トム・マールヴォロ・リドル (ヴォルデモート卿): マートルを殺害した張本人。彼はマートルの死を最初の分霊箱作成のために冷酷に利用しました。
  • マートル (Myrtle): ギンバイカ(銀梅花)という植物の名前。ギリシャ神話では愛の女神アプロディーテーと関連付けられる一方で、死や冥界の象徴ともされます。「クレープ・マートル(サルスベリ)」は時に「涙の木」と呼ばれることもあり、彼女の「嘆き」のキャラクターと一致します。
  • ウォレン (Warren): ウサギなどが掘った巣穴が複雑に繋がった「巣」を意味する英語の姓。これは、彼女がホグワーツの複雑な配管網を移動する能力を暗示している可能性があります。
  • 映画での描写: 映画版では、スコットランドの女優シャーリー・ヘンダーソンが演じました。マートルは死亡時14歳の少女でしたが、撮影当時ヘンダーソンは30代後半であり、大人の女優が演じたことが特徴的です。(映画設定)
  • 所属寮: マートルがレイブンクロー寮生であるという事実は、原作小説内では明言されていませんでしたが、後に作者であるJ.K.ローリングが自身の公式サイトで明らかにしました。(J.K. Rowling公式サイト)