レギュラス・ブラックのロケット
基本情報
- タイプ: 魔法道具、偽の分霊箱
- 製作者: 不明 (レギュラス・アークタルス・ブラックが入手し、自身の目的のために使用した)
記述と外観
ヴォルデモート卿の分霊箱である本物のスリザリンのロケットと、見た目ではほとんど見分けがつかない、重い金のロケット。表面には、細かく砕かれた緑色の石で蛇のような華やかな「S」の文字がはめ込まれている。 本物の分霊箱とは異なり、この偽物はパーセルタング (蛇語) を必要とせず、物理的な力で開けることができた。作中では、ハリー・ポッターが親指の爪でこじ開けている。中には、レギュラス・アークタルス・ブラックが闇の帝王に宛てて書いた羊皮紙のメモが折りたたまれて入っていた。
魔法的特性と用途
このロケットの主な機能は 欺瞞 である。ヴォルデモート卿を欺き、彼の分霊箱がまだ洞窟の盆の中で安全に保管されていると信じ込ませるために作られた。その存在自体が、レギュラス・アークタルス・ブラックの反逆の意志を体現している。 内部に収められたメモは、イニシャル「R.A.B.」の主が誰であるかを間接的に示し、彼が分霊箱の秘密を暴き、それを破壊しようとしたことを闇の帝王に告げるためのものである。このロケット自体には、本物の分霊箱が持つような強力な闇の魔術や、着用者の精神に悪影響を与えるような呪いはかけられていない。その防御は、それが置かれていた盆の中の苦痛を伴う魔法薬に完全に依存していた。
歴史
元死喰い人であったレギュラス・アークタルス・ブラックは、ヴォルデモート卿が不死性を得るために分霊箱を創り出したことを知ると、彼に反逆することを決意した。彼はこの偽のロケットを用意し、「R.A.B.」の署名が入ったメモを中に忍ばせた。 1979年、彼は屋敷しもべ妖精のクリーチャーを伴い、本物の分霊箱が隠されている洞窟へ向かった。レギュラスは自ら盆の中の苦痛を伴う薬を飲み干し、本物のスリザリンのロケットをこの偽物とすり替えた。彼はクリーチャーに、本物のロケットを持ち帰って破壊するよう命じた後、盆を満たした湖のインフェリウス (亡者) たちに水中へ引きずり込まれ、死亡した。 偽のロケットは、1997年にアルバス・ダンブルドアとハリー・ポッターが洞窟を訪れるまで、約18年間盆の中に残されていた。二人はこれを本物の分霊箱だと信じて回収したが、ダンブルドアの死の後、ハリーが中に入っていたメモを発見し、これが偽物であることが判明する。この発見がきっかけとなり、ハリー・ポッター、ハーマイオニー・グレンジャー、ロン・ウィーズリーはクリーチャーから真相を聞き出し、本物のロケットの行方を追う旅を本格化させることになった。
物語における役割
- プロット上の役割: 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の結末における重要なミスリードとして機能する。当初、ダンブルドアの死は本物の分霊箱を追い求める中での犠牲であったとハリーと読者に信じさせ、物語に深い絶望感を与えた。
- キャラクターの掘り下げ: このロケットと内部のメモは、レギュラス・ブラックの改心、勇気、そして自己犠牲を証明する唯一の物理的な証拠である。彼の死後の名誉を回復させ、ブラック家やスリザリン寮出身者にも高潔な人物がいたことを示す象徴となった。
- 分霊箱探しの起爆剤: この偽物の発見がなければ、三人組は本物のスリザリンのロケットの所在を知ることはできなかった。これがきっかけでクリーチャーにたどり着き、そこからマンダンガス・フレッチャー、そしてドローレス・アンブリッジへと続く本物のロケットの足跡をたどることが可能となった。
舞台裏情報
この偽のロケットそのもののデザインや由来について、作者J.K.ローリングによるインタビューやPottermoreでの詳細な言及は特に知られていない。物語上の役割と、それが明らかにするレギュラス・ブラックの英雄的な物語に焦点が当てられている。