スキャバーズ

スキャバーズ

スキャバーズは、当初ウィーズリー家のペットとして登場した年老いたネズミです。しかし、その正体は魔法使いピーター・ペティグリュー動物もどき (Animagus) の能力で変身した姿です。彼はジェームズ・ポッターシリウス・ブラックリーマス・ルーピンのかつての学友でありながら、ヴォルデモート卿に寝返り、ポッター夫妻を裏切った張本人です。物語において、彼は親友を裏切って死に追いやり、シリウス・ブラックに無実の罪を着せ、後にヴォルデモート卿の復活を助けるという重要な役割を担います。

ピーター・ペティグリューホグワーツ魔法魔術学校グリフィンドール寮に組分けされ、そこでジェームズ・ポッターシリウス・ブラックリーマス・ルーピンと親友になりました。友人たちと共に「忍びの地図」を作成した際、彼は「ワームテール」というあだ名を名乗りました。彼は友人たちと共に、人狼であるルーピンを支えるため、未登録の動物もどきとなり、ネズミに変身する能力を習得しました。

卒業後、ペティグリューは友人たちと共に不死鳥の騎士団に加わりましたが、ヴォルデモート卿の力に恐怖し、スパイとして死喰い人に情報を提供するようになります。ポッター夫妻が「忠誠の呪文」で身を隠した際、夫妻の強い希望で彼が「秘密の守人」となりましたが、彼は即座にその秘密をヴォルデモート卿に漏らし、夫妻の死を招きました。

裏切りが発覚することを恐れたペティグリューは、シリウス・ブラックを裏切り者と殺人の犯人に仕立て上げました。彼は公衆の面前で大規模な爆発を起こして12人のマグルを殺害し、自らの指を一本切り落として死を偽装しました。その後、ネズミの姿(スキャバーズ)となって逃亡し、12年間をウィーズリー家のペットとして過ごしました。当初はパーシー・ウィーズリーに、その後はロン・ウィーズリーに飼われていました。

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』において、忍びの地図上でペティグリューの存在が確認されたこと、そして前足の指が一本欠けていることから、シリウス・ブラックリーマス・ルーピンによってその正体が暴かれます。叫びの屋敷で彼は自身の罪を白状しますが、ルーピンが人狼に変身した混乱に乗じて逃走します。逃亡後、彼はアルバニアの森で弱体化したヴォルデモート卿を発見し、彼の世話をしました。

ヴォルデモート卿の復活の儀式では、主への忠誠の証として自らの右手を犠牲に捧げました。その見返りとして、ヴォルデモート卿から強力な魔法の銀色の手を与えられました。最期はマルフォイの館の地下牢で、ハリー・ポッターへの一瞬の情けを見せたため、ヴォルデмоート卿から与えられた銀色の手が彼を裏切りとみなし、自らの首を絞めて命を絶ちました。

  • スキャバーズ (ネズミの姿): 毛が抜け落ちた灰色のでっぷりとしたネズミ。片方の前足の指(趾)が一本欠けているのが最大の特徴。普段は眠ってばかりで、魔法のネズミとしては役立たずだと思われていました。
  • ピーター・ペティグリュー (人間の姿): 小柄で、ネズミのような顔つきをした男。髪は薄く、先端が尖った鼻と潤んだ小さな目をしています。全体的に卑屈で臆病な印象を与えます。
  • 性格: 彼の行動原理は一貫して恐怖です。強い者に寄り添うことで身を守ろうとする典型的な弱虫であり、ジェームズ・ポッターシリウス・ブラックのような強い友人、そして後にはヴォルデモート卿のような強大な力を持つ者に従属しました。自己憐憫が強く、責任を他人に転嫁する傾向があります。
  • 動物もどき (Animagus): 彼の最も特筆すべき能力。未登録のままネズミに変身できます。この能力を12年以上にわたり、自身の正体を隠すために使用しました。
  • 闇の魔術 (Dark Arts): ヴォルデモート卿に仕える中で、主の復活に必要な複雑な魔法薬の調合を含む、ある程度の闇の魔術の知識を得ました。
  • 決闘能力 (Dueling): 学生時代から友人たちの中では最も魔法の才能に劣ると見なされており、決闘能力は高くありません。主に奇襲やだまし討ちを得意とします。
  • 忍びの地図 (The Marauder's Map): 作成者の一人(ワームテールとして)。皮肉にも、この地図が彼の生存を暴くきっかけとなりました。
  • 銀色の手 (Silver Hand): ヴォルデモート卿から与えられた魔法の義手。非常に強力ですが、主への裏切りを許さない呪いがかけられており、最終的に彼の命を奪いました。
  • 忍びの仲間 (The Marauders): かつては親友でしたが、彼は常に集団の中で最も弱い存在でした。最終的に、彼は友人全員を裏切りました。
  • ヴォルデモート卿 (Lord Voldemort): 恐怖から仕えた主人。ヴォルデモート卿はペティグリューを軽蔑していましたが、その利用価値は認めていました。
  • ウィーズリー家 (The Weasley Family): 12年間にわたり、彼の正体を知らずにペットとして飼っていた家族。
  • ハリー・ポッター (Harry Potter): 自分が裏切った親友の息子。叫びの屋敷でハリーに命を助けられたことで「命の借り」が生じ、この借りが、彼の最期の瞬間に無意識の躊躇いとして現れました。
  • Scabbers (スキャバーズ): 英語の “scab” は「かさぶた」や「卑劣な人物」を意味し、彼の薄汚れた外見と裏切り者の性質を暗示しています。
  • Peter (ピーター): イエスを3度否んだ聖ペテロ (Saint Peter) を連想させる名前であり、ペティグリューが友人たちを裏切ったことへの暗示の可能性があります。
  • Pettigrew (ペティグリュー): “petty” (些細な、心の狭い) と “grew” (成長した) を組み合わせた姓と解釈でき、彼が「小物にしか成長しなかった」ことを示唆しているかもしれません。
  • Wormtail (ワームテール): 「忍びの仲間」としてのあだ名。“worm” (虫けら) と “tail” (尻尾) からなり、彼の卑屈な性格とネズミの姿を的確に表しています。
  • 映画版では、俳優のティモシー・スポールがピーター・ペティグリューを演じています。(映画設定)
  • 原作では、ペティグリューの死はマルフォイの館の地下牢で銀色の手に首を絞められるという形で明確に描かれています。一方、映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』では、彼がハリーへの躊躇いを見せた後、銀色の手が彼を罰する描写はあるものの、明確な死の瞬間は描かれておらず、気絶させられたように見えます。(映画設定)