ヒイラギの杖

ヒイラギの杖

* タイプ (Type): 魔杖 * 所有者 (Owners): ハリー・ポッター * 製造者 (Maker): ギャリック・オリバンダー

ハリー・ポッターが初めて所有した魔杖。長さは 11インチ(約28センチメートル)、材質はヒイラギ (Holly)、芯材は不死鳥の羽根 (Phoenix feather) である。この羽根は、アルバス・ダンブルドアが飼っている不死鳥フォークスから提供されたものである。オリバンダー氏によれば、この杖は「しなやかで良くしなる」(nice and supple) と評されている。

この杖は、そのユニークな芯材と歴史的背景から、数多くの強力で特異な魔法特性を示した。 * 兄弟杖 (Brother Wands): この杖の芯材である不死鳥の羽根は、ヴォルデモート卿の杖に使われている羽根と全く同じ不死鳥フォークスから取られたものである。これにより、二本の杖は「兄弟杖」となり、互いに戦うことを拒む性質を持つ。 * プライオ・インカンタテム (Priori Incantatem): 兄弟杖同士が無理に戦わされると、プライオ・インカンタテム(呪文逆戻し)と呼ばれる現象が発生する。1995年、リトル・ハングルトンの墓地でハリーヴォルデモートが決闘した際、この現象が発生した。二本の杖が光線で結ばれ、ヴォルデモートの杖が最近使用した呪文の「残響」や「影」を逆順に吐き出した。これにより、セドリック・ディゴリーフランク・ブライスバーサ・ジョーキンズ、そしてハリーの両親であるジェームズ・ポッターリリー・ポッターの霊姿が現れ、ハリーの脱出を助けた。 * 自己防衛と記憶能力: 杖はプライオ・インカンタテムの経験を通じて、ヴォルデモートの魔法の痕跡を吸収し、彼を宿敵として認識するようになった。1997年の「七人のポッター作戦」の際、ハリーが無意識状態に陥ったにもかかわらず、杖は自らの意志で行動し、黄金の炎の呪文を放ってヴォルデモートを攻撃し、ルシウス・マルフォイの杖を破壊した。 * 破損と修復: 1997年、ゴドリックの谷ナギニの襲撃から逃れる際、ハーマイオニー・グレンジャーが放った爆発の呪文が跳ね返り、ハリーの杖は二つに折れてしまった。レパロ (Reparo) を使っても修復不可能なほど深刻な損傷だったが、ハリーホグワーツの戦いの後、所有者となったニワトコの杖の絶大な力を用いて、このヒイラギの杖を完全に修復することに成功した。

  1. 1991年: ハリー・ポッターが11歳の誕生日の後、ダイアゴン横丁にあるオリバンダーの店でこの杖に選ばれる。オリバンダー氏は、この杖の兄弟杖がハリーに額の傷をつけた杖であることに気づき、「実に奇妙だ」と述べた。
  2. 1995年: リトル・ハングルトンの墓地でヴォルデモートとの決闘に使用され、プライオ・インカンタテムを引き起こす。
  3. 1997年: 「七人のポッター作戦」の空中戦で、所有者の意識とは無関係にヴォルデモートを攻撃する。同年冬、ゴドリックの谷ハーマイオニー・グレンジャーの呪文によって偶発的に破壊される。
  4. 1998年: ホグワーツの戦い終結後、ハリーニワトコの杖の力を使ってヒイラギの杖を完璧に修復し、以降も自身の杖として使い続けることを選んだ。

ヒイラギの杖は、単なる魔法の道具ではなく、ハリー・ポッターの魔法使いとしてのアイデンティティそのものを象徴する存在である。杖とヴォルデモートの杖との「兄弟」関係は、二人の運命的な繋がりを物理的に示す重要なプロットデバイスであり、物語全体の対立構造の根幹を成している。杖が破壊されたことはハリーに大きな精神的打撃を与え、彼がニワトコの杖の正当な所有者になるまでの過程で重要な役割を果たした。最終的に、ハリーが最強のニワトコの杖よりも、自身に忠実なヒイラギの杖を選んだことは、彼の謙虚さと自己への忠実さを示す象徴的な行動である。

  • J・K・ローリングが設定したケルトの樹木暦によれば、ヒイラギは保護と幸運を象徴し、邪悪なものを撃退する力を持つとされる。ハリーの誕生日である7月31日は、ケルトの樹木暦でヒイラギが支配する期間に含まれており、この木材が彼に選ばれたのは偶然ではない。(Pottermore)
  • 映画版では、杖の持ち手部分が樹皮のような粗い質感でデザインされているが、原作にはこのような詳細な記述はない。(映画設定)