フォード・アングリア

フォード・アングリアは、一見するとただのアクアマリン色(または薄い青色)の小型なマグルの自動車である。しかし、アーサー・ウィーズリーによって魔法がかけられており、内部は見た目よりもはるかに広く、少なくとも8人の乗員、複数の大きなトランク、そしてペットのフクロウやかごを快適に収容できる。物語が進むにつれて、特に暴れ柳との衝突後は、車体には多くのへこみや傷が見られるようになった。

この車には、アーサー・ウィーズリーによって数々の魔法が施されている。

  • 飛行能力: この車は空を飛ぶことができる。通常の自動車と同じように運転するが、空中に浮上し、雲の上を走行することが可能である。
  • 透明化: ダッシュボードにある銀色の小さなボタンを押すことで、インビジビリティ・ブースター (透明ブースター) が作動し、車体と乗員をマグル魔法使いの両方から見えなくすることができる。ただし、この機能は時々故障することがある。
  • 空間拡張: 内部空間が空間拡張チャームによって魔法的に拡張されており、外見からは想像できないほどの広さを持つ。
  • 半ば知性を持つ存在: 禁じられた森で野生化した後、車は独自の意志を持っているかのような行動を見せるようになった。例えば、ハリー・ポッターロン・ウィーズリーアクロマンチュラの群れに襲われた際に、自律的に現れて二人を救出した。

この車は元々、アーサー・ウィーズリーが所有し、「マグル製品の悪用」に関する法律の抜け穴を利用して秘密裏に魔法の改造を施したものである。 1992年の夏、フレッド・ウィーズリージョージ・ウィーズリー、そしてロン・ウィーズリーがこの車を使い、ダーズリー家に監禁されていたハリー・ポッターを救出した。 同年9月1日、屋敷しもべ妖精のドビーの妨害によってキングズ・クロス駅九と四分の三番線の入り口を通り抜けられなかったハリーとロンは、この車でホグワーツ魔法魔術学校まで飛行した。しかし、ホグワーツ到着時に着陸に失敗し、車は城の敷地内にある暴れ柳に激突して大破。その後、怒ったかのように乗員を降ろし、禁じられた森へと走り去り、野生化した。 数ヶ月後、森の中で巨大グモのアラゴグの子供たちに追い詰められたハリーとロンを、野生化したフォード・アングリアが救出した。これが、小説の中でこの車が目撃された最後の場面である。その後の車の行方は不明だが、依然として禁じられた森の中を徘徊しているものと思われる。

フォード・アングリアは、特に『ハリー・ポッターと秘密の部屋』において極めて重要な役割を果たす。ハリーのダーズリー家からの脱出、ホグワーツ特急に乗り遅れた際の移動手段、そして禁じられた森でのアクロマンチュラからの奇跡的な救出劇など、物語の重要な転換点でハリーとロンの窮地を救う デウス・エクス・マキナ (機械仕掛けの神) として機能する。 また、この車はアーサー・ウィーズリーマグル製品への純粋な好奇心と、魔法省の規則を少しだけ曲げてしまうという彼の性格を象徴する存在でもある。

  • J.K.ローリングは、フォード・アングリアを作品に登場させたのは、彼女の若い頃の親友が同じモデルのターコイズと白の車を所有しており、それに乗った思い出が非常に懐かしく楽しいものだったからだと語っている。(J.K. Rowling 公式サイト)
  • 映画版では、実際に複数のフォード・アングリア 105E が撮影に使用された。車の登録番号は「7990 TD」である。(映画設定)
  • この車は、作者自身が最も気に入っている乗り物の一つであると公言されている。