「プリンスの物語」は、セブルス・スネイプが死の間際に自らのこめかみから杖で引き出した、銀色がかった光を放つ記憶の集合体です。その物質は 「気体でも液体でもない」 と表現され、憂いの篩 (Pensieve) に移して再生するために使用されます。ハリー・ポッターは、ハーマイオニー・グレンジャーが魔法で出現させたフラスコ瓶にこの記憶を回収しました。 これは特定の魔法道具ではなく、一個人が最も重要と考える記憶を物理的な形で抽出し、他者へ託すための魔法的な媒体そのものを指します。
この記憶の主な用途は、所有者であるセブルス・スネイプの視点から、彼の生涯における一連の重要な出来事を第三者(ハリー・ポッター)に追体験させることです。憂いの篩と共に使用することで、記憶は客観的な三人称視点の映像として再生され、当事者の感情や思考のニュアンスまで忠実に伝えます。 「プリンスの物語」は、アルバス・ダンブルドア亡き後、スネイプがヴォルデモート卿を倒すための最後の決定的な情報をハリーに伝える唯一の手段として用いられました。口頭での説明に伴う誤解や時間的制約を排除し、疑いようのない真実を伝えるための、最も確実な方法でした。
ハリー・ポッターが憂いの篩で見た記憶は、ほぼ年代順に再生され、スネイプの人生の謎を解き明かしました。
「プリンスの物語」は、ハリー・ポッターシリーズ全体における最大の伏線の一つを回収する、極めて重要なプロットデバイスです。