スリザリンの怪物

スリザリンの怪物は、ホグワーツ魔法魔術学校の創設者の一人であるサラザール・スリザリンによって育てられた、巨大なバジリスクの個体名です。この怪物は、スリザリンホグワーツからマグル生まれの生徒を「一掃」するという目的のために、校内に隠された秘密の部屋に千年近く棲み続けていました。 この怪物はパーセルタング(蛇語)を話す者、すなわちスリザリンの継承者にのみ服従します。物語の中では、トム・マールヴォロ・リドル(後のヴォルデモート卿)によって二度にわたり解放され、ホグワーツに恐怖をもたらしました。

  1. 第一の開室事件 (1943年)

当時ホグワーツの生徒だったトム・マールヴォロ・リドルは、自身がスリザリンの継承者であることを突き止め、秘密の部屋を開きました。彼はバジリスクを操り、生徒の一人であったマートル・ワレン(後の嘆きのマートル)を殺害しました。この事件の責任はルビウス・ハグリッドと彼が飼っていたアクロマンチュラアラゴグに押し付けられ、ハグリッドは退学処分となりました。

  1. 第二の開室事件 (1992年-1993年)

ヴォルデモート卿分霊箱の一つであるトム・リドルの日記を通じて、トム・リドルの思念がジニー・ウィーズリーを操り、再び秘密の部屋を開かせました。この年、バジリスクは直接的な殺害には至らなかったものの、その視線を間接的に見たミセス・ノリス(猫)、コリン・クリービージャスティン・フィンチ=フレッチリーほとんど首無しニック(ゴースト)、そしてハーマイオニー・グレンジャー石化させました。

  1. 死とその後

ハリー・ポッター秘密の部屋バジリスクと対決しました。不死鳥フォークスバジリスクの目を潰して「死の直視」を無力化した後、ハリー組分け帽子から現れたゴドリック・グリフィンドールの剣で怪物を突き殺しました。バジリスクの死後、その牙は非常に強力な毒を持つため、分霊箱を破壊する貴重な手段となりました。ハリートム・リドルの日記を、後にロン・ウィーズリーハーマイオニー・グレンジャーハッフルパフのカップを、秘密の部屋に残されたバジリスクの骸骨から引き抜いた牙で破壊しました。

秘密の部屋 に登場するバジリスクは、成体のバジリスクの中でも規格外の巨体を誇り、その胴体は太い木の幹ほどもありました。全身は毒々しい輝きを放つ緑色の鱗で覆われ、ランプのように大きく、黄色い目をしています。その異名である 蛇の王 (King of Serpents) にふさわしい威容を誇っていました。

  • 死の直視 (Deadly Gaze): バジリスクの最大の武器。その目を直接見た生物は即死します。
  • 石化の睨み (Petrifying Gaze): 鏡や水の反射、カメラのレンズ、あるいはゴーストなどを通して間接的に目を見た場合、石化します。マンドレイクマンドレイクの回復薬で治療が可能です。
  • 猛毒の牙 (Venomous Fangs): その牙には極めて強力な毒が含まれており、分霊箱のような最も強力な黒魔術の産物さえも破壊することができます。この毒に対する唯一の既知の治療法は、不死鳥の涙だけです。
  • 長寿 (Longevity): サラザール・スリザリンの時代から約千年にわたって生き延びました。
  • 弱点 (Weakness): すべてのバジリスクの共通の弱点として、雄鶏の鳴き声を聞くと即死します。作中では、ハグリッドが飼育していた雄鶏たちがジニー・ウィーズリーによって殺されました。

スリザリンの怪物」は、その出自と役割に由来する称号です。この生物の種族名である「バジリスク」は、ギリシャ語で「小さな王」を意味する「バジリスコス」(basiliskos) に由来すると考えられており、その称号 蛇の王 とも一致します。

  • 映画版では、バジリスクの大きさは原作の描写よりもさらに巨大に描かれており、視覚的な迫力を増しています。(映画設定)
  • バジリスクという生物は、J.K.ローリングの創作ではなく、ヨーロッパの伝説に古くから登場する伝説の生物が元になっています。伝説においても、蛇の王とされ、その視線や息が死をもたらすと語られています。