ホレス・スラグホーン

ホレス・E・F・スラグホーン

ホレス・E・F・スラグホーンは、ホグワーツ魔法魔術学校魔法薬学の教授であり、長年にわたりスリザリン寮の寮監を務めた人物です。彼は才能ある学生や有力なコネを持つ学生をえこひいきすることで知られ、自身の非公式なサークル「スラグ・クラブ」を主宰していました。物語の後半において、若き日のトム・マールヴォロ・リドル分霊箱に関する決定的な情報を与えてしまったという過去の記憶をハリー・ポッターに提供する、極めて重要な役割を担います。当初は臆病で自己保身的な一面を見せますが、最終的にはホグワーツの戦いヴォルデモート卿に立ち向かう勇敢さを示しました。

スラグホーンはセブルス・スネイプが就任する以前、長年にわたってホグワーツ魔法薬学教授とスリザリン寮の寮監を務めていました。彼は自身のサークル「スラグ・クラブ」を通じて、将来有望な生徒たちとの関係を築き、そのコネクションを自身の利益のために利用していました。 彼の教え子の中でも特に優秀だったのがトム・マールヴォロ・リドルでした。スラグホーンはリドルの才能と魅力に惹かれ、彼をクラブに招き入れました。しかしある夜、リドルから魂を分割して不死性を得るための分霊箱について質問された際、スラグホーンは禁断の闇の魔術に関する情報を与えてしまいます。このことを彼は生涯にわたって深く後悔し、自身の記憶に改ざんを施して事実を隠蔽しようとしました。

ヴォルデモート卿が最初に失墜した後、スラグホーンはホグワーツを引退しました。しかし、ヴォルデモートが復活すると、死喰い人に勧誘されることを恐れて潜伏生活に入ります。彼はマグルの家を転々としながら、追跡を逃れるために高度な魔法で自身の痕跡を消していました。アルバス・ダンブルドアハリー・ポッターが彼を発見した際、彼は肘掛け椅子に変身術で化けていました。

1996年、ダンブルドアはハリーを「コレクション」に加えられるという餌でスラグホーンを巧みに説得し、彼をホグワーツ魔法薬学教授として復職させます。これにより、セブルス・スネイプは念願の闇の魔術に対する防衛術の教授職に就くことになりました。 復職後、スラグホーンはすぐにハリーを「スラグ・クラブ」に招待します。彼は半純血のプリンスの教科書のおかげで魔法薬学に驚異的な才能を見せるハリーを特にお気に入りとしました。ダンブルドアから託された使命を果たすため、ハリーはスラグホーンから分霊箱に関する本当の記憶を引き出そうと試みます。最終的に、アラゴグの葬儀の後、幸運の液体 (フェリックス・フェリシス) の助けを借りてハリーはスラグホーンを説得し、改ざんされていない完全な記憶の入手に見事成功しました。

ホグワーツの戦いの際、スラグホーンは当初、スリザリンの生徒たちを避難させることに注力していました。しかし、彼はホグズミードからの援軍を率いて戦場に帰還し、ミネルバ・マクゴナガルキングズリー・シャックルボルトと共にヴォルデモート卿本人と直接対決するという、並外れた勇気を示しました。

外貌

  • 非常に太った体型で、巨大なセイウチのような口ひげを生やしていると描写されています。
  • 豪華で古風な服装を好み、ベルベットの部屋着などを身に着けていることが多いです。

性格

  • 基本的に陽気で、快適さや贅沢を愛する快楽主義者です。彼は「人のコレクター」であり、有名人、才能ある者、有力なコネを持つ者と関係を築くことを好みます。
  • 日和見主義的で臆病な一面も持ち合わせており、それは分霊箱に関する記憶を改ざんし、長年潜伏していたことからもうかがえます。
  • しかし、彼は本質的に邪悪な人物ではありません。良心の呵責を感じる心を持っており、リリー・エバンズのような特定の生徒には純粋な愛情を抱いていました。最終的には自身の恐怖を克服し、正義のために戦う勇敢さも兼ね備えています。
  • アルバス・ダンブルドア: 長年の同僚であり友人。ダンブルドアはスラグホーンの弱さを理解しつつも、彼の根底にある良識を信じており、巧みに彼をホグワーツ復帰へと導きました。
  • ハリー・ポッター: スラグホーンにとって、ハリーは「コレクションの最高峰」でした。ハリーが母リリー・エバンズを彷彿とさせることもあり、彼に対しては特別な好意を抱いていました。
  • トム・マールヴォロ・リドル (ヴォルデモート卿): 彼が教えた中で最も有名かつ悪名高い生徒。スラグホーンは若き日のリドルの才能に魅了されましたが、後に彼を深く恐れるようになります。分霊箱の情報を与えてしまったことに、生涯を通じて罪悪感を抱き続けました。
  • リリー・エバンズ: スラグホーンが最も気に入っていた生徒の一人。彼はリリーの魔法薬学の才能を高く評価し、彼女のことを大きな愛情と共に語ります。
  • セブルス・スネイプ: 魔法薬学教授としての後任者であり、前任者。二人は同僚でしたが、作中で深い関係は描かれていません。
  • スラグ・クラブのメンバー: 彼は卒業後も、成功した元教え子たちと連絡を取り合い、そのコネを利用してクィディッチの観戦チケットや高級な菓子などを手に入れていました。
  • ホレス (Horace): 古代ローマの著名な詩人ホラティウス (Horatius) の英語名に由来します。これは彼の古風で教養ある一面を示唆している可能性があります。
  • スラグホーン (Slughorn): 「Slug(ナメクジ)」と「horn(角)」を組み合わせた名前です。「Slug」は彼ののんびりとした快楽主義的な性格や、時に見せる道徳的な曖昧さを連想させます。一方で、「Slughorn」はゲール語の「sluagh-ghairm」(軍の鬨の声)が語源である「slogan(スローガン)」とも音が似ており、彼が最終的に見せた勇敢さやリーダーシップを暗示しているとも考えられます。
  • 映画版では、俳優のジム・ブロードベント (Jim Broadbent) が演じています。
  • ミドルネームである「E・F」は、公式サイトPottermore(現Wizarding World)に掲載されたスリザリン寮の歓迎の手紙の中で初めて明かされました。(Pottermore)