ハリー・ポッターと秘密の部屋
書籍情報
- タイプ (Type): 小説、魔法界の年代記
- 所有者 (Owners): J.K. Rowling (著者)、Bloomsbury (英国出版社)、Scholastic (米国出版社)、静山社 (日本出版社)、世界中の読者
- 製作者 (Maker): J.K. Rowling
概要とプロット
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』は、J.K. Rowlingによるハリー・ポッターシリーズの第2巻である。物語は、ハリー・ポッターがホグワーツ魔法魔術学校での2年目を迎えるところから始まる。 夏休み、ダーズリー家にいるハリーの前に屋敷しもべ妖精のドビーが現れ、ホグワーツに戻ると命に危険が及ぶと警告する。警告を無視したハリーは、ロン・ウィーズリーとその兄たちに空飛ぶフォード・アングリアで救出され、ウィーズリー家の「隠れ穴」で夏休みの残りを過ごす。 新学期が始まると、ホグワーツでは不可解な出来事が続発する。壁に血で書かれた脅迫文が現れ、「スリザリンの継承者が秘密の部屋を開いた」と告げられる。その後、生徒たちが次々と石化させられる事件が発生し、校内は恐怖に包まれる。ハリーは、自分が蛇と話せる能力、パーセルタングの使い手であることを知り、自分がスリザリンの継承者ではないかと周囲から疑われる。 ハーマイオニー・グレンジャーの調査と、ハリーが偶然手に入れたトム・マールヴォロ・リドルの日記を通じて、彼らは50年前に開かれたという「秘密の部屋」の伝説に迫っていく。日記の中に保存された16歳のトム・リドルの記憶は、ハグリッドが部屋を開けた犯人であるかのように示唆していた。 最終的に、ジニー・ウィーズリーが部屋に連れ去られたことを知り、ハリーとロンはギルデロイ・ロックハート教授(その記憶消去呪文の失敗により役立たずになる)と共に、女子トイレに隠された入り口から秘密の部屋へと向かう。そこでハリーは、トム・リドルの記憶の正体が若き日のヴォルデモート卿であり、彼こそがサラザール・スリザリンの継承者であることを突き止める。リドルは日記を通じてジニーを操り、部屋の怪物である巨大なバジリスクを解き放っていた。 アルバス・ダンブルドアの不死鳥であるフォークスと組分け帽子から現れたグリフィンドールの剣の助けを得て、ハリーはバジリスクを打ち破り、蛇の牙で日記を突き刺して破壊する。これにより、トム・リドルの記憶は消滅し、ジニーは救出される。事件の終結後、ハリーはドビーをその主人であるルシウス・マルフォイから解放する。
物語の核心要素
- 秘密の部屋 (The Chamber of Secrets): ホグワーツの創設者の一人、サラザール・スリザリンが作ったとされる伝説の部屋。内部には彼の怪物が棲み、彼の真の継承者だけがそれを操ることができる。
- トム・マールヴォロ・リドルの日記 (Tom Marvolo Riddle's Diary): 魔法の力で持ち主と対話し、記憶を見せることができる日記。その正体はヴォルデモート卿が学生時代に作った最初の分霊箱 (Horcrux) であり、彼の魂の一部が封じ込められている。
- バジリスク (The Basilisk): 「蛇の王」と称される巨大な毒蛇。その眼を直接見た者を死に至らしめ、間接的に見た者(鏡や水面の反射、幽霊を通してなど)を石化させる。
- パーセルタング (Parseltongue): 蛇語。蛇と意思疎通する稀有な能力。サラザール・スリザリンの子孫に受け継がれるとされ、ヴォルデモート卿もこの能力を持つ。ハリーがこの能力を持つことは、彼とヴォルデモートの間の深いつながりを示唆する。
- グリフィンドールの剣 (The Sword of Gryffindor): 真のグリフィンドール生が必要とするときに組分け帽子から現れるゴブリン製の剣。本作でハリーがバジリスクを倒した際にその毒を吸収し、後に分霊箱を破壊する力を持つようになる。
シリーズ全体における重要性
この物語は、ハリー・ポッターシリーズ全体の根幹に関わる多くの重要な設定を初めて提示した。
- ヴォルデモート卿の過去: ヴォルデモート卿の本名がトム・マールヴォロ・リドル (Tom Marvolo Riddle) であり、彼がホグワーツの生徒であったこと、そしてスリザリンの継承者であることが明かされた。
- ハリーとヴォルデモートの繋がり: ハリーがパーセルタングを話せる理由が、ヴォルデモートが彼を殺そうとした夜に、自身の力の一部を意図せずハリーに移してしまったためであることがアルバス・ダンブルドアによって示唆される。これは後の分霊箱の伏線となる。
幕後情報
- 執筆の困難: J.K. Rowlingはインタビューで、第1巻『ハリー・ポッターと賢者の石』の成功によるプレッシャーのため、第2巻の執筆が非常に困難であったと語っている。(J.K. Rowling 談)
- 映画化: 2002年にクリス・コロンバス監督によって映画化された。映画版は原作に概ね忠実だが、「ほとんど首無しニック」の命日パーティーなど、いくつかの場面が省略されている。(映画版)