トム・マールヴォロ・リドル (Tom Marvolo Riddle)

トム・マールヴォロ・リドルは、のちにヴォルデモート卿として知られるようになる、史上最も危険とされた闇の魔法使いです。彼はサラザール・スリザリンの最後の直系の子孫であり、ゴーント家の血を引いています。彼の生涯をかけた目標は、死を克服して不死を手に入れ、魔法界を支配し、マグル生まれの魔女や魔法使いを粛清することでした。死喰い人として知られる信奉者たちを率い、二度にわたる魔法戦争を引き起こしました。ハリー・ポッターの宿敵であり、物語全体の主要な敵対者として中心的な役割を果たします。

トム・マールヴォロ・リドルは、1926年12月31日に生まれました。彼の母親は純血の魔女メローピー・ゴーントであり、父親は裕福なマグルのトム・リドル・シニアでした。メローピーは惚れ薬を用いてトム・シニアを魅了し結婚しましたが、薬の効果が切れると彼は妊娠中の彼女を捨てて去りました。メローピーはロンドンのウールの孤児院で息子を出産した後、まもなく死亡しました。 リドルはマグルの孤児院で孤独な幼少期を過ごしました。彼は幼い頃から自身の魔法の才能に気づいており、パーセルタング（蛇語）を操る能力や、念動力、他者に苦痛を与える力を持っていました。これらの力を使い、彼は他の孤児たちを支配し、恐れさせていました。

1938年、アルバス・ダンブルドアが孤児院を訪れ、リドルに彼が魔法使いであることを告げ、ホグワーツ魔法魔術学校への入学を勧めました。ホグワーツでは、リドルはスリザリン寮に組分けされ、模範的で才能あふれる生徒として頭角を現しました。彼は監督生、そして首席に選ばれ、多くの教師から寵愛を受けましたが、ダンブルドアだけは彼の本性を見抜き、常に警戒していました。 在学中、リドルは自身の出自、特にサラザール・スリザリンの末裔であるという事実を探求し始めました。5年生の時、彼は秘密の部屋を開き、中に潜むバジリスクを解き放ちました。この事件により、生徒の一人（のちの嘆きのマートル）が死亡しました。リドルはこの罪をルビウス・ハグリッドになすりつけ、自身の犯行を隠蔽しました。彼はマートルの死を利用して最初の分霊箱 (Horcrux) であるトム・リドルの日記を製作しました。また、彼はホラス・スラグホーン教授から分霊箱に関する詳細な知識を引き出しました。

ホグワーツ卒業後、リドルはボージン・アンド・バークスで短期間働きました。この時期に、彼は自身のマグルの父親と祖父母をリトル・ハングルトンの村で殺害し、その死を利用して母方の祖父から受け継いだマールヴォロ・ゴーントの指輪を分霊箱にしました。さらに、ヘプジバ・スミスという老婆を殺害し、ヘルガ・ハッフルパフのカップとサラザール・スリザリンのロケットを盗み出し、それらも分霊箱に変えました。 その後、彼は姿を消し、闇の魔術の探求に没頭しました。この過程で彼の肉体は人間離れした恐ろしい姿へと変貌し、彼は「トム」という平凡な名前を捨て、「ヴォルデモート卿」と名乗り始めました。

ヴォルデモート卿は死喰い人を率いて魔法界に恐怖と混乱をもたらしました。彼の支配に対抗するため、ダンブルドアは不死鳥の騎士団を結成しました。ある時、ヴォルデモート卿は「彼を打ち破る力を持つ者」の誕生を予言したシビル・トレローニーの予言を聞き、その対象をポッター家の赤ん坊、ハリー・ポッターだと判断しました。 1981年10月31日、ヴォルデモート卿はゴドリックの谷でポッター家を襲撃しました。彼はジェームズ・ポッターとリリー・ポッターを殺害しましたが、ハリー・ポッターにアバダ・ケダブラの呪いをかけた際、リリーが息子を守るためにかけた古代の愛の魔法によって呪いは跳ね返されました。ヴォルデモート卿の肉体は破壊され、彼の魂は分霊箱のおかげでかろうじて生き延びましたが、力を失い潜伏を余儀なくされました。

力を失ったヴォルデモート卿は、アルバニアの森で霊体として潜伏していましたが、1991年にクィリナス・クィレル教授の肉体に取り憑き、賢者の石を狙いましたが、ハリー・ポッターによって阻止されました。 1995年、ピーター・ペティグリューの助けを借り、リトル・ハングルトンの墓地で古い闇の儀式を行い、ハリーの血を使って完全な肉体を取り戻しました。彼は死喰い人を再招集し、第二次魔法戦争を開始しました。彼は魔法省を内部から掌握し、魔法界を支配下に置きました。 しかし、ハリーとその友人であるロン・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャーが分霊箱を一つずつ破壊していく中で、ヴォルデモート卿の力は徐々に弱まっていきました。最終決戦であるホグワーツの戦いにおいて、すべての分霊箱が破壊された後、ヴォルデモート卿はニワトコの杖の真の所有者であるハリーに向けて放った死の呪いが再び跳ね返り、1998年5月2日、ついに滅びました。

青年時代のトム・リドルは、黒髪に黒い瞳を持つ、非常に整った顔立ちの長身の青年でした。その魅力的な外見は、多くの人々を欺くのに役立ちました。しかし、闇の魔術に深く傾倒するにつれて彼の姿は変貌し、ヴォルデモート卿として復活した際には、蛇のように鼻が潰れ、猫のように瞳孔が縦に裂けた赤い目を持ち、蝋のように青白い肌の、骸骨のような恐ろしい容貌となっていました。

リドルは極めて知的で、カリスマ性を持ち合わせていましたが、その本性は冷酷でサディスティックでした。彼は他者への共感や愛情を全く理解できず、人々を恐怖によって支配することを好みました。彼の最大の恐怖は「死」であり、その恐怖が彼を不死の探求、すなわち分霊箱の創造へと駆り立てました。彼は自身のサラザール・スリザリンの血統を誇りに思う一方で、マグルの父親の血を激しく嫌悪していました。その傲慢さと過信は、愛や友情、屋敷しもべ妖精の魔法といった、彼が軽視した力によって最終的に敗北する原因となりました。

* 総合的な魔法力: アルバス・ダンブルドアに次ぐ、史上最も強力な魔法使いの一人と見なされています。 * 闇の魔術: 分霊箱の作成を含む、闇の魔術のあらゆる側面に精通した達人でした。 * パーセルタング: サラザール・スリザリンから受け継いだ、蛇と話すことができるパーセルマウスでした。 * 決闘: 非常に熟練した決闘者であり、多くの強力な魔法使いを打ち負かしました。 * 開心術と閉心術: 熟練した開心術士であり、他人の心を読むことに長けていました。また、強力な閉心術士でもありました。 * 無言呪文と杖なし魔法: 幼少期から杖なしで魔法を操り、高度な無言呪文を使いこなしました。 * 飛行: 箒やその他の補助なしで、自力で飛行できる数少ない魔法使いの一人でした。 * 魔杖: 長さ13.5インチ、イチイの木、不死鳥の尾羽根の芯（フォーカスの羽根）。この羽根はダンブルドアの不死鳥フォーカスから取られたものであり、ハリー・ポッターの杖の芯と兄弟関係にありました。

* トム・リドルの日記: 最初の分霊箱。 * マールヴォロ・ゴーントの指輪: 分霊箱であり、死の秘宝の一つである蘇りの石がはめられていました。 * サラザール・スリザリンのロケット: 分霊箱。 * ヘルガ・ハッフルパフのカップ: 分霊箱。 * ロウェナ・レイブンクローの髪飾り: 分霊箱。 * ナギニ: 彼の忠実な蛇であり、最後の分霊箱。 * ニワトコの杖: アルバス・ダンブルドアの墓から盗み出しましたが、真の所有者になることはできませんでした。

* ハリー・ポッター: 予言によって結びつけられた宿敵。ヴォルデモート卿は意図せずしてハリーを自身の7番目の分霊箱にしてしまい、彼に一部の能力（パーセルタングなど）を与えました。 * アルバス・ダンブルドア: ヴォルデモート卿が唯一恐れた魔法使い。ダンブルドアはリドルの本性を見抜き、生涯をかけて彼と対決しました。 * 死喰い人: ヴォルデモート卿の信奉者たち。彼は忠誠心ではなく恐怖によって彼らを支配しました。主な部下にベラトリックス・レストレンジ、ルシウス・マルフォイ、セブルス・スネイプなどがいます。 * セブルス・スネイプ: 最も信頼された部下の一人でしたが、彼の真の忠誠はリリー・ポッターへの愛ゆえにダンブルドアに捧げられていました。

* Tom Marvolo Riddle: Tomは彼が嫌悪した平凡なマグル風の名前。Marvoloは母方の祖父マールヴォロ・ゴーントから。Riddle（謎）は、彼が見下していたマグルの父親の姓です。 * Lord Voldemort: この名前は、“Tom Marvolo Riddle” のアナグラム（I am Lord Voldemort）から作られています。フランス語の vol de mort は「死の飛翔」または「死からの逃亡」と解釈でき、彼の死への恐怖とそれを克服しようとする野心を象徴しています。

* J.K. ローリングは、「Voldemort」の最後の「t」は発音しないのが正しいと述べています。（Pottermore） * 映画版では、ヴォルデモート卿の死は肉体が灰となって崩れ去る描写になっていますが、原作では彼はただの人間のように床に倒れ、その死体の mundane finality（平凡な終焉）が強調されています。 * 映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では、ゴーント家に関するヴォルデモート卿の過去の記憶が大幅に省略されています。